岡田八十次

岡田八十次家：近江商人から蝦夷地の支配へ

岡田八十次家は、慶長年間（1596年 - 1615年）に近江国（現在の滋賀県）から蝦夷地（現在の北海道）に進出した老舗の近江商人です。屋号は松前において恵比寿屋、近江においては松前屋を名乗り、歴代当主が岡田弥三右衛門、岡田八十次の名を襲名しました。

岡田八十次家の隆盛

初代・岡田弥三右衛門玄悦は、永禄11年（1568年）に生まれ、慶長年間に八戸へ進出、後に蝦夷地松前に出店しました。3代目の岡田弥三右衛門秀慶の頃から享保年間（1736年）にかけて場所請負人となり、勢力を拡大していきました。場所請負人とは、幕府から蝦夷地の特定の場所の漁業権や交易権を請け負い、その場所の経営を行う者のことです。岡田家は、この場所請負によって富を築き上げました。

10代目の岡田八十次松住は、今須三和の三男で8代目の娘婿として岡田家に入り、23箇所もの場所請負人となるなど、岡田家の最盛期を築きました。岡田家は、蝦夷地における経済活動を支配し、大きな影響力を持つようになりました。

岡田小八郎家

岡田家には分家として岡田小八郎家が存在します。初代・岡田小八郎玄慶は、5代岡田弥三右衛門の弟にあたります。3代目の岡田小八郎政渉は質素倹約に努め、小八郎家中興の祖と言われています。4代目の岡田小八郎政直は八幡朽木陣屋より勝手御用達となりました。

5代目の岡田小八郎政徳は岡田家最盛期に家督を継ぎました。しかし、6代目の岡田小八郎政祺は明治維新に伴う社会の変化に対応できず、苦境に立たされました。

岡田八十次家の衰退

11代目の岡田八十次広猷は、10代目の娘婿として岡田家に入りましたが、慶応元年（1865年）に小樽内場所の請負を失い、衰退の兆しが見え始めます。13代目の岡田八十次は明治16年（1883年）に家督を継ぎましたが、明治34年（1901年）には岡田家は事実上倒産しました。

歴代当主

岡田八十次家

岡田藤左衛門：岡田家高祖、安土城下に生まれる。
岡田弥三右衛門 (初代)玄悦：（永禄11年（1568年）-承応3年（1654年））
岡田弥三右衛門 (3代)秀慶：（生年不詳-元禄6年（1693年））
岡田弥三右衛門 (4代)玄正：（生年不詳-宝永7年（1710年））
岡田弥三右衛門 (5代)秀悦（正広）：（生年不詳-明和2年（1765年））
岡田弥三右衛門 (6代)礁意（正利又は広孝）：（生年不詳-天明元年（1781年））
岡田八十次 (7代)秀遠：（生年不詳-安永9年（1780年））
岡田八十次 (8代)秀山（常広）：（生年不詳-天保12年（1841年））
岡田八十次 (9代)誠定（広房）：（生年不詳-文化12年（1815年））
岡田八十次 (10代)松住：（生年不詳-文政4年（1821年））
岡田八十次 (11代)広猷（正期）：（生年不詳-明治40年（1907年））
岡田八十次 (12代)眞哲：（生年不詳-大正2年（1913年））
岡田八十次 (13代)：（生年不詳-昭和15年（1940年））

岡田小八郎家

岡田小八郎 (初代)玄慶（治與）：（元禄11年（1698年）頃-宝暦13年9月（1763年10月））
岡田小八郎 (2代)恵雲：（享保4年（1719年）頃-寛政元年（1789年））
岡田小八郎 (3代)政渉：（宝暦11年（1761年）頃-享和元年2月（1801年3月））
岡田小八郎 (4代)政直：（天明6年（1786年）頃-文政10年10月（1827年11月））
岡田小八郎 (5代)政徳：（天保12年（1841年）頃-明治21年（1888年））
* 岡田小八郎 (6代)政祺：（嘉永元年（1848年）頃-明治34年（1901年）12月）

岡田八十次家は、近江商人としての才覚と蝦夷地における場所請負によって一時代を築きましたが、時代の変化に対応できず、その歴史に幕を閉じました。しかし、その足跡は、蝦夷地の開発史において重要な位置を占めています。

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