岡田弥三右衛門

岡田弥三右衛門

岡田弥三右衛門（おかだ やざえもん、永禄11年（1568年） - 承応3年（1654年））は、江戸時代初期に活躍した商人であり、蝦夷地に進出した近江商人・岡田八十次家の初代として知られています。岡田家の当主は代々八十次（やそじ）と称しましたが、初代の名乗りは弥三右衛門が正しいとされています。

生涯

近江国（現在の滋賀県）では、六角氏や浅井氏の衰退後、その一族や遺臣の多くが農民や商人に転じました。岡田家も元武士の家柄であると伝えられています。弥三右衛門は永禄11年（1568年）頃、蒲生郡加茂村（現在の近江八幡市）に生まれました。

若い頃には安土城下で商売を営んでいましたが、本能寺の変後、安土城が落城したため、天正14年（1586年）に豊臣秀次が八幡城を築城したことを機に、八幡城下爲心町に新たに店を構えました。その後、八幡城の廃城とともに町が衰退すると、慶長年間（1596年 - 1615年）に呉服太物を携えて奥州へ行商に出かけ、八戸を拠点として大いに財を築きました。

さらに、松前藩家臣の工藤平右衛門の助力を得て、松前（現在の北海道松前町）に進出し、蝦夷地に呉服・太物・荒物を販売する支店を大松前に開設し、屋号を「恵比須屋」としました。後に松前藩からの信任を得て、蝦夷地の千石船を用いて海産物を日本海経由（北前船）で出羽から北陸、上方へと輸送したり、蝦夷地における漁場経営や物資の調達を請け負うなど、御用商人として活躍しました。弥三右衛門は岡田家の蝦夷地における基盤を確立し、慶安3年（1651年）に郷里の近江八幡で亡くなりました。

子孫の活躍と衰退

弥三右衛門の死後も、子孫は松前の支店を拠点として蝦夷地における近江商人の中心的な存在として活動を続けました。岡田家第10代の頃には、小樽内・古平・礼文・利尻など23ヶ所で場所請負を行いました。明治4年（1871年）には小樽（旧・小樽内）に支店を移し、12代目・13代目が北海道の開発事業に参加し、小樽の町の基盤整備に貢献したり、北海道で炭鉱や農場を経営したり、さらには九州地方でも事業を展開しました。しかし、当時としては時代を先取りしすぎた事業も多く、経営は苦しくなり、明治34年（1901年）に13代で破産を余儀なくされました。

参考文献

宮本又次「岡田八十次」『国史大辞典 2』吉川弘文館、1980年 ISBN 978-4-642-00502-9
上村雅洋「岡田八十次」『日本歴史大事典 1』小学館、2001年 ISBN 978-4-095-23001-6
伊藤孝博「岡田彌三右衛門」『北海道海の人国記』無明舎出版、2008年

関連項目

岡田八十次

外部リンク

一般社団法人 近江八幡観光物産協会 - 歴史を楽しむ－近江商人 岡田彌三右衛門邸址
文化庁 文化遺産オンライン - 松前屏風

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