岡田小八郎 (6代)

岡田小八郎 (6代)

岡田小八郎（6代）（おかだ こはちろう (ろくだい)、嘉永元年（1848年）頃 - 明治34年（1901年）12月）は、近江商人「岡田八十次」家の分家当主として、明治維新期の激動の時代に家業の立て直しに尽力しました。屋号は本家と同じく松前屋。

生涯

岡田小八郎家は、岡田八十次家第五代当主弥三右衛門秀悦が、弟である玄慶（法号、諱は治與）を分家させて建てられました。6代目小八郎、諱を政祺は、5代小八郎政徳（幼名與吉、通称元太郎）の次男として、嘉永元年（1848年）頃、近江国蒲生郡八幡（現在の滋賀県近江八幡市）に生まれました。元治元年（1864年）、16歳で家督を継ぎましたが、父である5代小八郎（隠居名八十八）が後見人となりました。

6代目が家督を継いだ頃の小八郎家は、本家である「岡田八十次」家をしのぐほどの隆盛を誇っていました。名古屋の店では呉服・畳表・蚊帳などを取り扱い、松坂屋・十一屋・大丸屋といった大店を抑え、抜きん出た地位を確立していました。尾張藩からは名字帯刀を許され、同藩の御用達商人として活躍していました。

しかし、小八郎政祺が6代目を襲名してから3年後の慶応3年10月（1867年11月）、江戸幕府第15代将軍徳川慶喜が大政奉還を行い、翌年には戊辰戦争が勃発。新政府は財源が枯渇しており、戊辰戦争のための軍用金を始め、様々な名目で上納金を要求し、その要求は次第に過酷さを増していきました。また、大津商事設立など政府や県の肝煎り事業に対しても、要請に応じて出資（大津商事には1万両）を行いましたが、これらの事業は多くが頓挫してしまいます。さらに、小八郎家は尾張藩や同藩支藩の高須藩などに対して多額の大名貸しを行っていましたが、明治4年（1871年）7月の廃藩置県により、大名貸しに関する貸し金の回収は絶望的な状況に陥りました。

こうした状況の中、6代小八郎の妻である須賀が急逝。公私ともに様々な問題が重なる中、当主である小八郎政祺と隠居していた八十八政徳は連夜協議を重ね、明治12年（1879年）10月、両名連名で一族・家人に対して「告諭書」を発しました。その内容は、「創業以来の歴史を述べ、金融業を廃止して商売に専念し、新規事業によって状況を打開する」というものでした。さらに、「必ず後栄の時が来て喜びにあふれるだろうが、今は危急存亡の時であり、今日から衣食住すべてにおいて徹底的な節約を行い、後年の回復を目指して5年間辛抱しよう。そのためには、住み慣れた本家を売り、先祖代々の家具を売り払い、情を断ち切って断行的な改革を行う。奉公人もこの意を体し、共に尽力してほしい」という悲痛な決意が述べられていました。

告諭書に基づき、6代小八郎政祺は家運を賭け、近江八幡の本宅から諸道具・田畑の一切を売り払い、大阪店も亡き妻の父である正野玄三に売却しました。名古屋においては、熱田店を閉鎖し、名古屋店の大改革を行いました。しかし、資金力のある競合店との競争に苦戦し、業績の大幅な回復には至りませんでした。そして、明治20年（1887年）、小八郎家を代表する名古屋店は、初代小八郎玄慶による享保15年（1730年）の創業から157年の歴史に幕を閉じました。名古屋店の閉店を見届けた父・八十八政徳は、翌明治21年（1888年）に亡くなりました。

その後も、6代小八郎政祺は事業展開の策を練り続け、海外進出・外国貿易に目を向けました。北アメリカ大陸への社員派遣、ハワイへの国産品輸出、サンフランシスコへの食料品店開設など、様々な事業を試みましたが、いずれも成功を収めることはできませんでした。明治23年（1890年）には、最後の砦であった京都三条店を閉鎖。明治31年（1898年）には後妻である歌も亡くなり、明治34年（1901年）12月、6代小八郎政祺自身も京都府立病院で息を引き取りました。まさに時代に翻弄された生涯でした。

関連項目

岡田八十次
岡田弥三右衛門

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