岡田武彦

岡田武彦：陽明学の探求者、その生涯と業績

岡田武彦（1908年11月22日 - 2004年10月17日）は、日本の哲学者・著述家であり、陽明学研究の第一人者として知られています。兵庫県姫路市に生まれ、九州帝国大学で支那哲学史を専攻。楠本正継教授に師事し、その影響を受け生涯にわたり儒学、特に陽明学の研究に情熱を注ぎました。

教育者としての足跡

大学卒業後、岡田は教職の道を歩み始めます。富山県立神通中学校、宮崎県立延岡中学校、福岡県立修猷館高等学校、長崎師範専門学校、熊本陸軍幼年学校などで教鞭を執りました。戦後、福岡県立修猷館高等学校教諭を経て、1949年に九州大学助教授、1958年に教授に就任。1966年にはアメリカ・コロンビア大学の客員教授も務めました。1969年には九州大学教養部長に就任し、後進の育成に尽力。1972年に定年退官し、九州大学名誉教授となりました。退官後も西南学院大学、活水女子短期大学、活水女子大学で教鞭を執り、1989年に退職するまで教育者として活躍しました。

学術研究と国際交流

岡田の学術研究は、孔子を祖とする儒学から宋学、陽明学、そして日本の儒学へと広がり、その神髄を学者だけでなく一般の人々にも伝えました。教職退任後は、日本の学者や門弟たちと王陽明遺跡探訪の旅を数度にわたり行い、中国本土の学者たちとの交流を深めました。王陽明遺跡の修復にも貢献し、1989年には「明王陽明先生之墓」竣工除幕式で挨拶を行い、自作の祭文を朗読しました。

また、国際的な学術交流にも積極的に取り組みました。福岡で「東アジアの伝統文化国際会議」、京都で「国際陽明学京都会議」を開催し、国内外の学者たちに交流の場を提供。これらの国際会議は、陽明学研究の発展に大きく貢献しました。

社会活動と晩年

著述活動の傍ら、岡田は地元福岡で「思遠会」「東洋の心を学ぶ会」「簡素書院」などを主宰し、一般の人々に向けて王陽明の『伝習録』をはじめとする中国古典や、自身の「身學説」「兀坐説」「簡素の精神」などを講義しました。晩年には日本的思考に基づく『崇物論』を提唱しました。

多忙な日々を送る中でも、岡田は道友との交流を楽しみ、書画や音楽にも親しみました。特にベートーヴェンを愛好したといいます。2004年10月17日、老衰のため福岡市の自宅で逝去。葬儀は無宗教式で執り行われ、故人が愛したベートーヴェンの音楽が奏でられました。同年10月30日には「お別れ会＝告別式」が福岡市で開催され、全国から多くの人々が参列し、その死を悼みました。

岡田武彦の思想

岡田は朱子学を「主知的」、陽明学を「情意的」と捉え、知識偏重ではなく、実践を通じて体で覚える「体認」の重要性を説きました。その思想は、学者だけでなく一般市民、さらには園児にまで広く慕われ、多くの人々に影響を与えました。

記念館と著作

2007年10月には、福岡県朝倉市に岡田の著作や所蔵品を収蔵・展示する「岡田武彦記念館」が開館しました。著書には単行本のほか、『岡田武彦全集』全24巻があります。これらの著作は、陽明学研究における貴重な資料として、現在も多くの人々に読み継がれています。

業績

王陽明遺跡探訪の旅ならびに遺跡修復への貢献
東アジアの伝統文化国際会議
国際陽明学京都会議

主な著書

『王陽明と明末の儒学』
『簡素の精神』
『現代の陽明学』
* 『崇物論』

岡田武彦は、陽明学の研究と普及に生涯を捧げ、多くの人々にその思想を伝えました。その業績は、日本の思想界に大きな足跡を残しています。

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