岡田陽

岡田陽（おかだ あきら）は、日本の児童演劇研究および演劇教育における先駆者の一人です。1923年3月11日に鳥取県で生まれた彼は、生涯を通じて子どもたちの表現活動と全人教育としての演劇の可能性を探求し続けました。

彼の家族背景には特筆すべき点があります。父は陸軍中将の岡田資（おかだ たすく）であり、戦後B級戦犯として処刑されるという複雑な歴史を背負っていました。妻の純子氏は、玉川学園創立者である小原國芳の次女にあたります。純子氏自身も舞踊家・教育者として活躍し、著名な舞踊家である石井漠に師事していました。後に、父・岡田資の生涯を描いた大岡昇平原作、小泉堯史監督の映画『明日への遺言』には、岡田陽氏とその妻純子氏をモデルとした子息とその婚約者が登場しています。

岡田陽氏は玉川工業専門学校（現在の玉川大学）を卒業後、玉川学園で教育者としての道を歩み始めました。中学部長、高等部長を歴任し、後に玉川大学の教授となります。大学では文学部次長も務め、退職後は名誉教授の称号を得ました。特に教育者としての功績として大きいのは、玉川大学文学部に芸術学科を創設したことです。さらに、その中に演劇専攻や児童専修課程などを設け、演劇教育の専門家や児童演劇に関わる多くの人材育成に尽力しました。

研究者・実践者としては、学校劇の分野で中心的な役割を果たしました。彼は多数の学校劇脚本を執筆し、子どもたちが演劇を通じて成長するための具体的な教材を提供しました。また、海外の演劇教育に関する先進的な理論や手法を日本に紹介することにも力を入れました。例えば、ジェラルディン・B.シックスやブライアン・ウェイといった研究者の著作を翻訳し、日本の演劇教育関係者に広く知らしめました。これらの活動を通じて、日本の演劇教育の理論的基盤の構築と普及に大きく貢献しました。

学内での教育・研究活動にとどまらず、日本の演劇界全体にも影響を与えています。特に、東京都の文化施設である青山円形劇場（現在閉館）の建設に際しては、その基本設計に関与しました。長年にわたる児童演劇と演劇教育への功績が認められ、2004年には日本児童演劇協会賞を受賞しています。

岡田氏は教育や研究に関する多くの著作を残しました。代表的なものとしては、演劇教育の理念を説いた『ドラマと全人教育』や、子どもの表現活動に焦点を当てた『子どもの表現活動』などの理論書があります。また、教育現場で活用できる『玉川学校劇集』や『新しい学校劇』といった実践的な脚本集を多数編纂・執筆しました。海外児童文学の翻訳も手掛け、『青い鳥』などが知られています。さらに、子どものための歌の作詞も行っています。

岡田夫妻の子どもたちもまた教育・芸術の分野で活躍しています。長男の岡田洋介氏は教育者、長女の玉川まや子氏は舞踊教育者として、それぞれの道で貢献しています。

岡田陽氏は、研究、教育、創作、翻訳、施設設計など多岐にわたる活動を通じて、日本の児童演劇および演劇教育の発展に不可欠な足跡を残しました。子どもたちの創造性や人間性を育むための演劇の力を深く信じ、その普及と発展のために生涯を捧げました。2009年11月26日、86歳でその生涯を終えました。

主な著書
『ドラマと全人教育』（玉川大学出版部）
『子どもの表現活動』（玉川大学出版部）

主な編纂・共著
『玉川学校劇集』（全10巻、玉川大学出版部）
『新しい学校劇』（玉川大学出版部）

主な翻訳
『子供のための創造教育』（ジェラルディン・B.シックス著、玉川大学出版部）
『ドラマによる表現教育』（ブライアン・ウェイ著、玉川大学出版部）

これらの活動と業績は、現在に至るまで日本の演劇教育の現場に大きな影響を与え続けています。

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