岡田資

岡田資（おかだ たすく）

生涯

岡田資は、1890年（明治23年）4月14日に鳥取県で生まれました。鳥取県第一中学校（現在の鳥取県立鳥取西高等学校）を卒業後、陸軍士官学校に進み、1911年（明治44年）に卒業（第23期）し、歩兵少尉に任官しました。その後、歩兵第40連隊に配属されます。

1922年（大正11年）には陸軍大学校（第34期）を卒業し、軍人としてのキャリアを積んでいきます。1925年（大正14年）には駐英大使館付武官補佐官としてロンドンに勤務し、国際的な視野も培いました。1927年（昭和2年）に歩兵少佐に昇進し、東京へ転勤。1928年（昭和3年）からは陸軍大学校の教官として後進の指導にあたりました。1930年（昭和5年）には参謀本部員となり、秩父宮雍仁親王付侍従武官も務めました。

1933年（昭和8年）には教育総監部課員、1935年（昭和10年）には歩兵第80連隊長に就任。1937年（昭和12年）には第4師団参謀長となり、日中戦争では武漢三鎮攻略戦に参加。1938年（昭和13年）には陸軍少将に昇進し、歩兵第8旅団長を務めました。その後、陸軍戦車学校長、相模陸軍造兵廠長を経て、1941年（昭和16年）に陸軍中将に昇進。1942年（昭和17年）には戦車第2師団長に親補されます。

1943年（昭和18年）には東海軍需管理部長に就任し、戦時体制下での軍需物資の管理に携わりました。終戦間際の1945年（昭和20年）には、第十三方面軍司令官兼東海軍管区司令官に親補されました。同年12月1日、予備役編入となり、同日から東海復員監を務めましたが、同月21日まででその職を終えました。

戦犯としての逮捕と処刑

1945年（昭和20年）5月14日の名古屋空襲の際、撃墜され捕虜となった米軍B-29搭乗員27名を自らの命令で処刑したことが、戦後、問題となりました。この行為が国際法違反（捕虜虐待罪）とされ、B級戦犯として連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）に逮捕され、軍事裁判（横浜法廷）にかけられました。裁判では、米軍による空襲を「無差別爆撃」と批判し、搭乗員は「捕虜ではない」と主張しましたが、認められず、1949年（昭和24年）9月17日、巣鴨プリズンで絞首刑が執行されました。処刑に際しては、秩父宮からの助命嘆願や、GHQ側の法務担当官からの終身刑への変更や銃殺刑への変更の意見もありましたが、死刑は覆りませんでした。

人物像と評価

岡田は、中尉時代には、後に日中和平工作に尽力した今井武夫が所属する部隊の区隊長を務めていました。また、秩父宮付武官を務めた経験から、若者を愛する人物として知られ、「青年将軍」とも呼ばれていました。

戦犯裁判では、捕虜虐待の罪を全面的に争い、自らの責任を主張しました。大岡昇平の小説『ながい旅』では、部下のために罪を被ろうとする人物として描かれ、多くの人々に影響を与えました。しかし、裁判に関わった元被告人や弁護士の証言により、部下と共に米兵処刑の偽装工作を行い、責任を部下に押し付けようとした実態が明らかになっています。

また、武漢攻略戦における毒ガス使用についても問題視されています。当時、使用が許されていたのは催涙性や嘔吐性のガスでしたが、大量に使用すると死に至る可能性も指摘されており、その使用法については隠蔽が図られていた可能性も指摘されています。俳優の土屋嘉男は、岡田が視察に来た際、「活字を読む者は国賊」と訓話したことに怒りを感じたという証言も残っています。

著作と関連作品

岡田は、巣鴨プリズン収監中に、自身の体験や仏教思想を綴った遺著『巣鴨の十三階段: 戦犯処刑者の記録』や『毒箭: 岡田資遺稿』を執筆しました。これらの著作は、岡田の人物像を知る上で貴重な資料となっています。

また、岡田の生涯は、大岡昇平の小説『ながい旅』や、それを映画化した『明日への遺言』など、数多くの作品で描かれています。これらの作品を通じて、岡田の複雑な人物像や、戦争の悲惨さを知ることができます。

栄典

1941年（昭和16年）9月15日 - 従四位
1943年（昭和18年）10月1日 - 正四位

勲章

* 1940年（昭和15年）8月15日 - 紀元二千六百年祝典記念章

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