岡野雅行 (会社社長)

岡野雅行：世界を魅了した町工場の技術者

岡野雅行（おかの まさゆき）は、1933年生まれ、東京都墨田区出身の日本の工業技術者であり経営者です。金属加工会社・岡野工業株式会社の代表取締役を務め、世界に誇る金属深絞り加工の技術で知られています。

生い立ちと技術の研鑽

1945年、国民学校卒業後、父親が創業した金型工場を手伝い始めました。旧制中学校を中退後、20代の頃には父親に頼み、夜間に工場を借りて自ら受注した仕事をこなすことで技術を磨きました。この時期に岡野氏は、「安すぎて誰もやらない仕事」「技術的に難しすぎて他の誰にもできない仕事」のみを手掛けるという信念を確立しました。

岡野工業の発展

1972年、父親から岡野金型製作所を引き継ぎ、岡野工業へと社名を変更。金型生産からプレス加工へ、さらには自動化設備開発へと事業を拡大しました。その技術は世界的に認められ、数々のテレビ番組にも取り上げられています。

岡野工業は、少数精鋭の体制ながら、常に最先端の技術開発を追求し続けました。その結果、リチウムイオン電池ケースや、痛くない注射針「ナノパス33」といった革新的な製品を生み出しました。

代表的な製品

リチウムイオン電池ケース: ウォークマン向けに開発された技術を応用し、携帯電話向けに転用。ステンレスの深絞り加工で液漏れを防ぐ構造を実現しました。
痛くない注射針（ナノパス33）: テルモからの依頼で開発された、世界初の痛くない注射針。蚊の口吻とほぼ同じ外径200μm、内径80μmという極細の針を、ステンレス素材のプレス加工で実現しました。この製品は、2005年度のグッドデザイン大賞を受賞しています。

受賞と社会貢献

岡野氏の功績は、数々の賞にも表れています。

2004年、旭日双光章を受章。
2005年、日本イノベーター大賞、ジャパンクール賞を受賞。
2006年、勇気ある経営大賞を受賞。

著作活動と講演

岡野氏は、20冊以上の著書を執筆し、講演活動も積極的に行っています。自身の経験に基づいた経営哲学や技術論は、多くの人々に勇気と希望を与えています。

主な著書には、

『俺が、つくる! 世界一の職人岡野雅行』
『カネは後からついてくる!』
『人生は勉強より「世渡り力」だ!』

などがあります。

脱税事件と会社の終焉

2012年、岡野工業の脱税事件が発覚し、東京国税局から1億円超の所得隠しを指摘されました。この事件について岡野氏は、外部工場への売上計上の問題が原因であると説明しています。

2018年、岡野氏は日本経済新聞のインタビューで、2年後を目処に会社を閉じる意向を表明しました。長年にわたり日本のものづくりを支えてきた岡野工業は、その歴史に幕を閉じることとなりました。

メディア出演

クローズアップ現代
がっちりマンデー!!
夢の扉 〜NEXT DOOR〜
カンブリア宮殿

など、多数のテレビ番組に出演し、その技術と経営哲学を語りました。

岡野雅行の遺産

岡野雅行氏の技術と経営哲学は、日本のものづくりに大きな影響を与えました。彼の「不可能を可能にする」という精神は、これからも多くの人々に勇気を与え続けるでしょう。

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