岩佐十良

岩佐十良（いわさ とおる）

1967年1月28日、東京・池袋に生まれる。株式会社自遊人の代表取締役であり、クリエイティブディレクター、そして自身が創刊した雑誌『自遊人』の編集長も務める人物である。

武蔵野美術大学でインテリアデザインを学び、在学中の1989年にクリエイティブカラットを創業。翌1990年にはこれを株式会社化し、現在の株式会社自遊人の母体となる組織を設立し、代表取締役に就任した。2000年には、地域や暮らしの質に焦点を当てた雑誌『自遊人』を創刊し、編集長を務める。また、2002年には食の安全性や流通に言及するウェブメディア『オーガニック・エクスプレス』を開設するなど、多角的な情報発信を展開した。

2004年、活動の拠点を東京から新潟県南魚沼市へと移し、自身も同地へ移住した。日本有数の米どころである南魚沼で、自社運営の田んぼ「自遊田」での米作りを始め、さらに一般参加者が田植えや稲刈りなどを体験できる「大人の農作業体験会」を企画・実施。これは新潟県中越地震後の山古志村でのボランティア活動が発展したものである。2010年には農業生産法人自遊人ファームを設立し、農業分野での事業を本格化させた。

食の分野における取り組みも活発であり、2010年には「雪国A級グルメ」プロジェクトを開始。食材の品質情報開示を徹底したこの取り組みは、日本初の試みとして注目を集めた。岩佐は「A級グルメプロデューサー」として、北陸・日本海沿岸地域の農山漁村における「六次産業化」を推進し、高品質な食文化の定着と地域経済の活性化を目指している。

情報発信だけでなく、体験を通じた地域価値の創造にも力を注いでいる。2014年には、新潟県南魚沼市の温泉旅館を再生する形で、体験型宿泊施設「里山十帖」を開業した。この施設は、地域の自然、食、文化を五感で体験できる場として、「リアルメディア」と称される。里山十帖は国内外で高く評価され、「グッドデザイン賞BEST100」や「ものづくりデザイン賞」など数々の賞を受賞した。これを皮切りに、2018年には「講 大津百町」「箱根本箱」、2020年には「松本十帖」「silvermountainlodge.com by 里山十帖」と、各地で同様のコンセプトに基づく施設展開を進めている。これらの活動を通じて、全国各地の地域資源を新たな視点で捉え直し、その魅力を引き出すクリエイティブディレクションを行い、地方都市や農村地域の活性化に貢献している。

その活動は広くメディアにも取り上げられており、『情熱大陸』『ソロモン流』『カンブリア宮殿』『プロフェッショナル 仕事の流儀』など、多くのテレビ番組に出演。被災地支援や地域再生に関する活動にも積極的に関わっている。

主な著書には、『一度は泊まりたい有名宿 覆面訪問記』(2010年)、『実録！「米作」農業入門』(2011年)、『田舎暮らしの方法』(2011年)、『里山を創生するデザイン的思考』(2015年)、『新潟美食手帖』(2019年)などがある。これらの著作でも、自身の経験や哲学に基づいた地方や暮らしに関する提言を行っている。

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