岩佐純

岩佐純：明治時代の西洋医学をリードした医師

岩佐純（1835年-1912年）は、明治時代の日本の医学史に大きな足跡を残した医師です。福井藩医の家に生まれ、幼少期から医学に触れる環境で育ちました。江戸や下総国で西洋医学を学び、その後は長崎でオランダ人医師からも師事するなど、西洋医学の習得に尽力しました。

初期の経歴と医学教育への貢献

1860年には福井藩医・洋学所教授に任命され、教育者としての道を歩み始めます。明治政府の要職を歴任する中で、大阪医学校の設立など、日本の医学教育の発展に大きく貢献しました。学校権判事、大学少丞、大学権大丞、大学大丞、中教授を歴任し、教育者としてだけでなく行政面でも活躍しました。

宮廷における活動と晩年

明治2年には徴士として明治政府に出仕。その後、大侍医となり、昭憲皇后、そして明治天皇の侍医を務めました。宮廷における活躍は、岩佐純の名声を高めることに繋がりました。告成堂病院を開設し、院長として自身と息子の岩佐新とともに診療にあたり、多くの患者を診てきました。医学研究のため、1年半にわたって欧州に滞在するなど、常に研鑽を怠りませんでした。

明治天皇第五皇女、久宮静子内親王の危篤時には、浅田宗伯と治療方針を巡って対立するなど、困難な局面にも直面しました。最終的には、香川敬三が天皇に伺いを立て、池田謙斎を呼び戻して岩佐純と共に治療にあたりましたが、内親王は亡くなりました。1898年には宮中顧問官を兼任し、1907年には男爵に叙爵されるなど、社会的な地位も確立しました。1911年には病のため侍医を辞任。翌年、宮中新年宴会に参列中に急逝しました。

学術的な業績と人物像

岩佐純は、ニーマイルの『急性病類集』全5巻を翻訳・編纂するなど、西洋医学の日本への導入に貢献しました。これは、当時の日本の医学界に大きな影響を与えた重要な業績です。弟には鉱山学者の岩佐厳がいます。

岩佐純は、西洋医学の導入期において、教育者、行政官、医師として多様な役割を担い、日本の近代医学の発展に多大な貢献をした人物と言えるでしょう。彼の生涯は、激動の明治時代を生き抜いた、一人の医師の揺るぎない信念と献身を示す物語です。数々の栄典や勲章、そして彼自身の功績は、日本の近代医学史において、岩佐純という名を永遠に記憶に残すにふさわしいものとなっています。

参考文献

『立身致富信用公録 第14編』国鏡社、1903年
『稿本 福井市史（上）』福井市、1930年
『岩佐純』 - コトバンク
岩佐純 (初版) - 『人事興信録』データベース
岩佐 純 | デジタルアーカイブ福井
伝記 岩佐純先生小伝『中外医事新報. (765)』 (日本医史学会, 1912-02)

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