岩内大火

岩内大火

岩内大火は、1954年（昭和29年）9月26日に北海道岩内郡岩内町で発生した大火災です。この火災は、日本海を北上していた洞爺丸台風（台風15号）による激しい風雨という悪条件下で発生し、岩内町の中心市街地の約8割、3,298戸が焼失するという壊滅的な被害をもたらしました。

発生と初期の状況

積丹半島の西に位置し、かつてニシン漁で栄えた港町、岩内町。大火は9月26日午後8時15分頃、町の南西部にあるアパートから出火しました。台風接近下の警戒にあたっていた消防隊が駆けつけましたが、消火活動は困難を極めました。猛烈な南風により消火用水は炎に届かず拡散し、火の勢いを止めることはできませんでした。火災はたちまち周辺に燃え広がりました。

烈風下での延焼拡大

南風に煽られて始まった火災は、当初北へ進むと予測されました。しかし台風の接近に伴い風向きが南西から西へと変化したため、火の勢いは東へ向き、役場や銀行などが集まる町の中心部へと拡大しました。炎はさらに港湾施設にも及び、漁船燃料のドラム缶が爆発を起こし、火災範囲を広げました。港内の漁船も炎上し、漂流して沿岸部への延焼要因となりました。深夜になり風向きが東に変わると、それまで比較的無事だった地区にも火の手が回り、火災は翌朝まで長時間燃え続け、市街地の大部分を焼き尽くしました。

被害規模と原因

この大火により、焼失戸数3,298戸、焼失面積約32万坪という甚大な被害が生じました。人的被害も大きく、罹災者は16,622人、死者35人（焼死33人、溺死2人）、負傷者551人、行方不明者3人となりました。これは、地震を原因としない火災としては戦後3番目の規模でした。相生、御崎、大和、万代、大浜、栄、清住、東山といった広範囲が被災し、多数の公共施設、金融機関、事業所が失われました。

火災の原因は、台風の接近を恐れて避難した住民が消し忘れた火鉢の火が、強風にあおられて飛び火したこととされています。

その後と文化的影響

岩内大火と同日、函館沖では青函連絡船「洞爺丸」が沈没する大事故が発生しました。この洞爺丸事故に世間の注目が集中したため、岩内大火の全国的な報道は限定的でした。火元の住人は、1956年に過失による失火で罰金刑を受けています。

岩内在住の画家、木田金次郎は、この火災で多くの作品を失いましたが、その後再び創作活動を再開しました。小説家の水上勉は、推理小説「飢餓海峡」で洞爺丸事故とともに岩内大火を参考にした出来事を描いています。

岩内町郷土館には、現在も岩内大火に関する常設展示があり、当時の写真などを通して被害の大きさと町の復興の歴史を知ることができます。

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