岩垂邦彦

岩垂邦彦：日本の電気通信事業の先駆者

岩垂邦彦（1857年10月2日 - 1941年12月20日）は、日本の実業家であり、技術者です。彼は、日本で最初の外資との合弁会社である日本電気株式会社（NEC）の創業者として、その名を歴史に刻んでいます。豊前国（現在の福岡県）に生まれた岩垂は、激動の時代の中で、日本の電気通信事業の黎明期を支え、発展に大きく貢献しました。

若き日の挑戦と学び

岩垂邦彦は、小倉藩士の次男として生を受けました。幼少期に父を亡くし、仇討ちを志したものの、国家に尽くすことこそが真の孝行であると考え、学問の道へと進みます。小倉藩が開校した育徳館で学び、その後、工学寮（後の工部大学校）に入学。1882年には、同校の電信科を卒業し、電気技師としてのキャリアをスタートさせました。

アメリカでの経験と技術革新への目覚め

工部省での勤務後、岩垂は1886年にアメリカへと渡り、エジソン・マシンワークス（現ゼネラル・エレクトリック）に入社。トーマス・エジソンの下で技術を磨き、最先端の技術に触れました。この経験は、彼の後のキャリアに大きな影響を与え、技術革新への強い情熱を育むこととなります。

大阪電灯での活躍と交流電力への信念

1888年、岩垂は大阪電灯（関西電力の前身）の技師として招聘され、発電機の調達を任されます。当時、エジソンが直流を推進する中、岩垂は交流電力の優位性を確信し、エジソン・マシンワークスと対立。トムソン・ウェスタン社から交流発電機を調達しました。この決断は、当時の電力業界における大きな転換点となり、彼の先見の明を示しました。

日本電気株式会社の設立

大阪電灯を退社後、岩垂は1894年に岩垂電気商店を設立。GE製品の輸入販売を手がけました。さらに、ウェスタン・エレクトリックとの提携を深め、1899年、日本電気株式会社を設立。この会社は、日本における電気通信事業の発展に大きな役割を果たすことになります。岩垂は、創業当初から取締役専務として経営に携わり、その後の日本の通信インフラの礎を築きました。

その後の活躍と遺産

1926年、岩垂は日本電気株式会社の取締役会長に就任。1929年に退任するまで、会社の発展に尽力しました。1934年には、長年の功績が称えられ、勲五等瑞宝章を受章しています。彼の墓は、横浜市の総持寺にあります。また、故郷のみやこ町にある福岡県立育徳館中学校・高等学校には、彼の功績を称える記念碑が建立されています。

岩垂邦彦は、その生涯を通じて、日本の電気通信事業の発展に貢献しました。彼の先見性と技術への情熱は、今日の高度情報化社会の礎を築いたと言えるでしょう。

家族

岩垂は多くの子供たちに恵まれ、その子孫は各界で活躍しています。

長男：岩垂好徳（大六共同役員）
長女：喜田村直子（喜田村眼科病院長夫人）
二女：岩垂裕（万有製薬会長夫人）
二男：岩垂邦雄（大六共同役員）
三男：岩垂捨三（日本車輛製造社長）
四男：岩垂梅四郎（大六共同、万有製薬役員）
三女：十合園子（岩崎電気社長夫人）
五男：岩垂平八（大六共同役員）

孫には、公衆衛生学者で水俣病の研究で知られる喜田村正次や、万有製薬社長を務めた岩垂孝一がいます。また、玄孫には、発明家でシンガーソングライターの小川コータがいます。

関連人物

ウォルター・T・カールトン：ウェスタン・エレクトリック社員で、日本電気の共同創業者

外部リンク

エジソンを唸らせた男　NEC創始者 岩垂 邦彦 - サガテレビで放映された番組の動画あり（NECウェブサイト内）

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