岩手観光バス

株式会社岩手観光バス：その足跡と歴史

株式会社岩手観光バスは、かつて岩手県盛岡市に拠点を置いていた貸切バス専業のバス事業者でした。1968年に岩手中央バスの経営再建策として、業績が好調だった貸切バス部門を独立させる形で設立され、東北地方初の貸切専業バス事業者としてその歴史をスタートさせました。

設立から国際興業グループへ

設立当初は有限会社でしたが、翌1969年2月には増資を行い株式会社へと組織変更。1970年には岩手中央バスと共に国際興業の傘下に入りました。その後、岩手中央バスは負債解消のために事業移管を行い国際興業グループから離脱しましたが、岩手観光バスは引き続きグループに留まりました。

定期観光バスの運行開始

1975年、岩手観光バスは日本国有鉄道（国鉄）盛岡鉄道管理局や盛岡駅長、盛岡市関係者からの要請を受け、定期観光バスの運行を開始しました。これは、岩手中央バスが労働争議などの影響で1971年に定期観光バスの運行を廃止して以来、4年ぶりのことでした。当初は会員制の主催旅行として、日曜日・祝日のみの運行でしたが、1982年の東北新幹線開通に合わせてコースを3種類に拡充。1984年には乗合路線免許を取得し、正式な定期観光バスとして運行を開始しました。1985年からは、定期観光バスのガイドが盛岡地区の民族衣装である「南部あねっこ」姿で乗務するようになり、これは岩手県交通への合併後も引き継がれています。

岩手県交通への合併

国際興業グループは、グループ全体の貸切バス運営の効率化を図るため、2000年に岩手観光バスを岩手県交通に吸収合併することを決定しました。合併後も定期観光バスの運行は岩手県交通に引き継がれました。合併直後は、旧岩手観光バスの営業所を「岩手県交通新滝沢営業所」として、既存の滝沢営業所と区別していましたが、後に盛岡地区の貸切車両を矢巾営業所に集約。新滝沢営業所の敷地には滝沢営業所が移転しました。現在の滝沢営業所には、滝沢村からの受託契約車両を除き、貸切車は所属していません。

車両について

発足当初は三菱や日野製の車両が多かったものの、国際興業傘下入り後はいすゞ車の比率が高まり、1994年には全ての車両がいすゞ車に統一されました。1980年には国際興業貸切色に塗装も統一されています。新車導入だけでなく、他社からの譲受車もあり、車両の入れ替わりは頻繁に行われました。中には、レンタカー会社から購入した小型車も存在しました。

岩手観光バスは、短期間ではありましたが、岩手県の観光輸送において重要な役割を果たした事業者でした。その歴史は、岩手県交通に引き継がれ、現在もその一部が息づいています。

関連項目
岩手県交通
岩手県交通滝沢営業所
岩手県交通矢巾営業所
国際興業

参考文献
バスジャパン・ハンドブックシリーズ19「岩手県交通 岩手観光バス（早池峰バス）」（1994年9月20日初版・BJエディターズ）
鈴木文彦「岩手のバス いまむかし」（2004年10月7日初版・クラッセ）

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