岩本素白

岩本 素白（いわもと そはく）

概要

岩本素白は、1883年8月17日に東京府麻布に生まれた名高い国文学者及び随筆家です。本名は堅一。彼の生涯にわたる業績は、日本の文壇に長らく影響を与え続けています。

家族背景

彼の父である竹次郎は、旧丸亀藩の士族であり、海軍に勤めていました。このような環境は、岩本の文芸への興味を育てる一因となりました。母の影響を受けつつ、早稲田大学の前身である東京専門学校の文学部国文科を卒業し、その後は教育の道に進むことになります。

教職と研究

岩本は、自身も母校である麻布中学校で教鞭を執り、後に早稲田大学文学部の国文科にて講師、そして教授としての職務を果たしました。特に随筆文学について教えることに特化し、多くの学生に影響を与えてきました。彼はまた、戦時中の戦災によって自宅の蔵書を失い、一時信州に疎開するという辛い経験もしています。それでも彼は執筆活動を続け、1954年になって定年を迎えるまでその教えを広めました。

晩年と死

定年退職後も、麻布高校や跡見学園短期大学にて教え続けましたが、1955年になんの前触れもなく自宅書斎で倒れ、約一ヶ月後にこの世を去りました。

人柄と著作

義理堅く、また潔癖な性格であった彼は、自身の著書を公刊することには消極的でした。そのため、彼の名著である『岩本素白全集』は、わずかな部数しか刷られたことがありませんでした。しかし近年、彼が残した著作やその人となりが識者に見直され、再版されることが増えています。

影響を受けた同時代の人物たち

早稲田大学では、歌人の窪田空穂が同僚であり、彼が主宰する歌誌『槻の木』にも参加し短歌や随筆を発表していました。また、同時代には歌人であり美術史学者の會津八一とも交流があり、彼との関係も彼の作家活動に影響を与えました。

主な著書

岩本は多くの著作を残しています。これらの中には、1938年に出版された『随筆集 山居俗情』や、1943年に発表された『日本文学の写実精神』があります。また、彼は1947年と1963年にそれぞれ『隨筆集 素白集』と『素白随筆』を刊行しています。

全集の刊行

彼の著作は、1974年から1975年にかけて春秋社から全集としてまとめられました。この全集には、『山居俗情・素白集』や『東海道品川宿・遺珠』、また『日本文学の写実精神・文芸論叢・信濃詠草』が含まれています。

再版と評伝

近年では、いくつかの著作が新たに刊行されており、特に『素白先生の散歩』や『東海道品川宿 岩本素白随筆集』などが人気を博しています。また、かつて岩本素白について詳しい研究を行った鶴ヶ谷真一や来嶋靖生の評伝もあります。これらの作品は、彼の作家としての側面だけでなく、その人間としての魅力に迫っています。

結論

岩本素白は、文学と教育の両方に貢献した偉大な人物です。彼の文芸への情熱は、日本文化の発展に寄与し、今もなお多くの人々に影響を与えています。

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