岸本卓

岸本卓：アニメ脚本家としての軌跡

岸本卓氏は1975年5月生まれ、兵庫県神戸市出身の脚本家です。愛称は「ナヨ」。小学生時代には香港で過ごした経験を持ち、幼少期から独特な感性を磨いてきました。将来の夢は、少年時代に読んだ『帝都物語』の影響から風水師になることだったといいます。

彼のキャリアは、愛媛大学法文学部夜間主コース卒業、千葉大学大学院修士課程修了という学術的なバックグラウンドから始まりました。大学院修了後、2002年4月より講談社のアルバイトを経て、雑誌『サイゾー』編集部に編集者として勤務。数々のゴシップ記事を執筆するなど、多様な経験を積んでいきます。

転機となったのは、鈴木敏夫プロデューサーへの突撃インタビューでした。この経験が、2005年2月にスタジオジブリへの入社へとつながります。アニメへの知識や関心はほとんどなかったと語る彼ですが、入社後わずか3ヶ月で社内結婚という出来事も経験します。

ジブリでは、高畑勲監督作品を担当することとなり、最初の仕事は高畑監督との話し相手でした。企画の話し合いは難航し、世間話すら交わすことができない日々が続いたといいます。しかし、ある時、高畑監督から小説の一場面を脚本化する仕事が与えられ、見よう見まねで取り組んだ結果、初めて褒められました。この経験が、彼を脚本の世界へと導くきっかけとなりました。

その後、『竹取物語』を題材とした企画に携わりますが、高畑監督の意向により題材や内容が幾度も変更され、最終的に2008年8月に岸本氏は降板することになります。

ジブリ退社後は、フリーランスの脚本家として活動を開始。2011年には『うさぎドロップ』でシリーズ構成と脚本を担当し、本格的なキャリアをスタートさせます。アルバイトをしながら家事育児に励む中、アニメ制作会社プロダクションI.Gの中武哲也プロデューサーからオファーを受けました。

以降、『ハイキュー!!』、『僕だけがいない街』、『ジョーカー・ゲーム』、『91Days』など、数々の話題作でシリーズ構成や脚本を担当し、その才能を遺憾なく発揮。2016年には、自身初となる長編アニメ映画『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』の脚本を手掛け、映画界にも進出しました。

近年では、『フルーツバスケット』シリーズや『王様ランキング』、『ブルーロック』など、話題の作品を次々と手がけ、人気脚本家としての地位を確立しています。多様なジャンルの作品に携わりながら、それぞれの作品世界に深みと魅力を与える岸本氏の脚本は、多くの視聴者から高く評価されています。

彼の作品リストは多岐に渡り、テレビアニメ、劇場アニメ、OVA、Webアニメなど、幅広い分野で活躍。特に、スポーツ、青春、ミステリーといったジャンルを得意としており、緻密な構成力と登場人物の心情描写の巧みさで知られています。常に新たな挑戦を続け、アニメ業界に大きな貢献をしている彼の今後の活動から目が離せません。

主な作品リスト

テレビアニメ
『うさぎドロップ』（シリーズ構成・脚本）
『ハイキュー!!』（シリーズ構成・脚本）
『僕だけがいない街』（シリーズ構成・脚本）
『ジョーカー・ゲーム』（シリーズ構成・脚本）
『91Days』（シリーズ構成・脚本）
『フルーツバスケット』（シリーズ構成・脚本）
『王様ランキング』（シリーズ構成・脚本）
『ブルーロック』（シリーズ構成・脚本）

劇場アニメ
『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』（脚本）
『鹿の王 ユナと約束の旅』（脚本）

その他
OVA、Webアニメなど多数。

岸本卓氏のキャリアは、一見すると突飛なようでいて、各段階で着実にステップアップを遂げていることがわかります。ゴシップ記事の編集経験やジブリでの下積み時代、そしてフリーランスとしての活躍を通じて培われた経験と才能は、彼の作品に独特の深みと魅力を与えていると言えるでしょう。今後の活躍にも期待が高まります。

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