岸本宏子

岸本 宏子（きしもと ひろこ）

岸本宏子（1943年 - 2020年10月9日）は、日本の著名な西洋音楽史学者であり、昭和音楽大学の名誉教授です。彼女は特にイタリア・ルネサンスのマドリガーレや音楽図書館学についての専門知識を持ち、音楽に関する科学的なアプローチを試みました。音楽教育と研究の分野でのたゆまぬ貢献により、岸本氏は日本における音楽史の発展に寄与しました。

経歴

岸本氏は東京都に生まれ、東京藝術大学で音楽学を学びました。大学の楽理科を卒業し、大学院の修士課程を修了した後、フルブライト奨学金を利用してアメリカのブリンマー・カレッジ大学院に進学しました。1975年にPh.D.（音楽学）を取得し、日本に帰国。

帰国後、岸本氏は1972年から1974年にかけて日本において非常勤講師として教え始め、東京藝術大学などで後進の指導にあたりました。また、音楽史の資料収集や保存のために、RISM（国際音楽資料情報協会）の日本における組織化にも尽力しました。1979年にはIAML日本支部の設立にも関与し、音楽の研究環境の向上に大きく寄与しました。2002年には昭和音楽大学の教授に就任し、後に名誉教授としてその功績が称えられました。

研究と活動

岸本氏の研究テーマは主にイタリア・ルネサンス音楽、特にマドリガーレに焦点を当てています。また、音楽図書館学に関する研究も精力的に行い、音楽資料の保存や利用の重要性を広めました。彼女は、音楽という形で人々の心に響く文化的な価値を伝えたいという思いを持ち続け、様々な活動を通じて音楽の魅力を発信しました。

晩年には、病と闘いながらも執筆を続け、音楽に関する知識を後世に伝えることに情熱を注いでいました。岸本氏の著作は、彼女の深い学識と熱意が反映されており、研究者や音楽愛好者に多大な影響を与えています。

主な著書

岸本氏の著書は多岐にわたりますが、特に注目すべきは以下の通りです。

• - 『ルネサンスの歌物語』（音楽之友社、1989年）
• - 『Il fondo musicale Venturi nella Biblioteca comunale di Montecatini Terme: catalogo』（Giunta regionale toscana, Editrice bibliografica、1989年）
• - 共著の『音楽の基礎資料：図書館における音楽書 楽譜 録音資料選定のために』（アカデミア・ミュージック、1985年）
• - 『つながりと流れがよくわかる 西洋音楽の歴史』（2020年、アルテスパブリッシング）

また、彼女は多数の訳書も手がけており、クラシック音楽や歌唱に関する重要な文献を日本語に翻訳しました。

岸本宏子氏の業績は、音楽分野での教育、研究、普及など、多方面にわたって日本の音楽文化を豊かにするものとなっています。彼女の貢献は今後も多くの人々に引き継がれ、音楽の楽しさや深さを届けることでしょう。

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