岸本由豆流

岸本由豆流（きしもと ゆずる）は、寛政元年（1789年）に伊勢国朝田村で生まれ、弘化3年閏5月17日（1846年7月10日）に没した江戸時代後期の国学者です。彼は「やまぶき園」や「尚古考証園」という号を用いていました。

出自は朝田某の子とされ、後に幕府の弓弦師である岸本讃岐の養子となり、岸本大隅と名乗りました。国学者としての道を歩むきっかけとなったのは、村田春海の門下に入ったことでした。春海のもとで国学を学び、その知識と関心を深めていきました。

由豆流は早くに家業である弓弦師を長男に譲り、隠居後は自身の興味と学問に没頭する生活を送りました。考証や著作に専念し、数々の著作物を世に残しています。代表的なものとしては、『万葉集考証』、『土佐日記考証』、『後撰集標注』などが挙げられます。

また、由豆流は非常に熱心な典籍の収集家としても知られており、その蔵書は3万巻にも及んだと言われています。これは、彼の学問に対する深い探求心と、古典籍に対する並々ならぬ愛情を示すものです。

晩年は浅草聖天町に居を構え、狩谷棭斎、市野迷庵、村田了阿、北静盧といった当時の学者や文化人と親交を深めました。彼らとの交流は、由豆流の学問や思想に大きな影響を与えたと考えられます。弘化3年（1846年）に亡くなった後、浅草の誓願寺塔頭林宗院に葬られました。

参考文献

清宮秀堅『古学小伝 巻2』（玉山堂,1886）
三省堂編修所 編『コンサイス日本人名事典』（三省堂,改訂版,1990）

関連文献

* 藤岡忠美「「和泉式部集標注」と岸本由豆流」国語国文研究21号（北海道大学国語国文学会,1962-03）

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