村田了阿

村田了阿：江戸時代後期の博識な俳人

村田了阿（むらた りょうあ、1772年-1844年）は、江戸時代後期の俳人として知られています。名は直温、字を高風といい、小左衛門、如春、一枝堂、春枝堂、臺麓といった号も使用しました。晩年には剃髪して了阿と名乗りました。

煙草商の次男として江戸に生まれ、下谷坂本、のちに浅草金藏寺周辺で暮らしました。幼少期から才能に恵まれ、国学は清原雄風、書は沢田東江といった著名な師に師事しました。和歌、俳諧、狂歌、狂詩画と、幅広い教養を身につけました。その学識は高く評価され、北静盧、狩谷棭斎、市野迷庵らと同列に語られるほどでした。72歳で生涯を閉じ、戒名は顕徳院一鶴了阿居士です。墓は下谷区金杉町西蔵院にあります。

了阿が残した手記には、当時の書物商（本屋）に対する痛烈な批判が記されています。了阿は書物商の商売根性を厳しく非難し、彼らを信用できないと断じています。例えば、大部の書物には目録や付録といった別巻が付属するのが一般的ですが、書物商は本文のみを販売し、別巻を別途高値で売りつけるといった不正行為を指摘しています。この記述から、了阿の誠実な人となり、そして当時の出版業界の実態の一端が垣間見えます。

学問への探究心は旺盛で、多種多様な著作を残しました。その数は膨大で、主な著作として『異域事項』（6巻）、『一枝堂全書』（84巻）、『一枝堂抄録』（262巻）、『一字編』、『考證千典』（10巻）、『事物類字』（7巻）、『説叢』、『鄭声語原』（2巻）、『俚言集覧』（50巻）、『方窠抄』、『老松考』、『五色石』、『三千方』、『袋草紙』などが挙げられます。これらの著作は、了阿の博識さと、多様な分野への関心の深さを示す貴重な資料となっています。

村田了阿は、単なる俳人という枠を超え、国学、書道、和歌、俳諧、狂歌、絵画など、多方面にわたる教養を備えた人物でした。その著作は、当時の社会状況や文化を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。書物商への批判を通して垣間見える彼の正直な性格、そして膨大な著作群は、今もなお人々に深い感銘を与え続けています。了阿の生涯と業績は、江戸時代後期の文化史を研究する上で欠かせない存在と言えるでしょう。彼の残した著作は、現代においても、その学識の深さと多様性から、高い評価を受けています。

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