狩谷棭斎

狩谷棭斎（かりや えきさい）

狩谷棭斎は、江戸時代後期に活躍した考証学者です。安永4年（1775年）に江戸で生まれ、天保6年（1835年）に没しました。本名は高橋真末、のちに望之と改名。字は卿雲、通称は津軽屋三右衛門（11代目）、別号を求古楼と称しました。

生涯

棭斎は、書籍商を営む高橋高敏の子として生まれました。幼少の頃から学問を好み、25歳で従祖弟にあたる狩谷保古の養子となります。津軽藩御用達という裕福な町人でありながら、学問に励み、1794年頃から屋代弘賢に師事して和漢の学を学びました。

墓は当初、江戸下谷の天竜寺にありましたが、後に巣鴨の法福寺へ移されました。

業績

棭斎は、青年期から古代日本文化の考証に力を注ぎました。考古遺品の収集と並行して、金石文や古銭の研究を行い、次第に漢籍善本の蒐集と校閲へと進みます。書誌学においては、卓越した見識を示しました。

例えば、「説文」については、親交のあった松崎慊堂や山梨稲川らと共同で研究を行いました。「度量衡」については、1790年以降、近畿地方への旅行を10回近く繰り返し、1832年には正倉院御物の諸尺を拝観するなど、実証主義的な研究を徹底しました。「和名抄」についても、松崎慊堂と研究会を重ね、詳細な比較考証を行いました。町人学者として、北静盧（屋根屋三右衛門）・市野迷庵（市野屋三右衛門）と並び「三三右衛門」と称されました。

晩年は、浅草の住居を「実事求是書屋」と名付けました。

森鷗外は晩年、史伝の執筆を志し資料を収集しましたが、公務と病のため実現には至りませんでした。

家族

二女の俊は、伊沢蘭軒の二男で幕府の奥医師となった柏軒に嫁ぎました。俊は才女として知られ、「今少納言」と呼ばれました。

主な著作

『本朝度量権衡攷』
『倭名類聚抄箋注』
『日本霊異記攷証』
『扶桑略記校證』
『古京遺文』
『上宮聖徳法皇帝説証註』
『京游筆記』
『日本現在書目證注稿』
『周尺攷辨』（岡本保孝共著）

関連人物

渋江抽斎
伊沢蘭軒
北条霞亭
森立之
菅茶山

狩谷棭斎は、考証学、書誌学において多大な貢献をした人物であり、その研究成果は今日でも高く評価されています。

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