岸本美緒

岸本美緒：明清社会経済史を専門とする歴史学者

岸本美緒氏は、1952年東京都生まれの著名な歴史学者です。専門は中国史、中でも明清時代の社会経済史に造詣が深く、その研究成果は国内外で高く評価されています。東京大学文学部東洋史学専修課程卒業後、同大学院に進学、東洋文化研究所助手などを経て、お茶の水女子大学で講師、助教授、教授を歴任しました。2018年にはお茶の水女子大学を退任し、名誉教授となりました。また、元日本学術会議会員としての活動にも携わっています。

学究の道の歩み

岸本氏のキャリアは、東京大学での学びから始まります。東京大学文学部東洋史学専修課程を卒業後、同大学大学院人文科学研究科東洋史学専門課程に進学。博士課程を中退後、東京大学東洋文化研究所助手として研究活動を開始しました。その後、お茶の水女子大学文教育学部に専任講師として着任、助教授を経て教授に昇格。1996年には東京大学文学部助教授、1997年には東京大学大学院人文社会系研究科教授に就任するなど、第一線で活躍されました。2007年には再びお茶の水女子大学に転じ、大学院人間文化創成科学研究科教授として後進の育成にも尽力しました。

研究業績と受賞

岸本氏の研究は、明清社会経済史に特化しており、その深遠な知識と独自の視点から多くの重要な成果を生み出しています。単著として、『清代中国の物価と経済変動』、『明清交替と江南社会 17世紀中国の秩序問題』、『中国社会の歴史的展開』（のちに『中国の歴史』としてちくま学芸文庫より刊行）、『風俗と時代観－明清史論集〈1〉』、『地域社会論再考－明清史論集〈2〉』、『礼教・契約・生存－明清史論集〈3〉』、『明末清初中国と東アジア近世』など、数多くの著書を執筆。さらに、『中国史』や『明清と李朝の時代』など共編著も多数手がけ、中国史研究に多大な貢献を果たしています。これらの著作は、明清時代の社会経済構造、文化、政治などを多角的に分析し、新たな知見を提供しています。

その卓越した研究業績は高く評価されており、2021年には第31回福岡アジア文化賞を受賞しました。この賞は、アジアの文化の発展に貢献した個人や団体に贈られる名誉ある賞であり、岸本氏の研究の重要性を示すものです。

岸本美緒氏の研究の意義

岸本美緒氏の研究は、中国史、特に明清時代の理解を深める上で非常に重要な役割を果たしています。緻密な史料分析に基づいた研究は、従来の解釈を覆す新たな視点を提示し、中国史研究に大きな影響を与えています。また、多くの著書や共編著を通して、専門家だけでなく一般の人々にも中国の歴史と文化への理解を深める機会を提供しています。彼女の研究は、歴史学研究の発展に貢献するだけでなく、現代社会における様々な問題を考える上で貴重な示唆を与えてくれるでしょう。今後、さらに多くの研究成果を期待したいところです。

もう一度検索