岸辺露伴 ルーヴルへ行く (映画)

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』詳細解説

概要

『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、荒木飛呂彦の人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』の一編を原作とした実写映画です。2023年5月26日に公開され、監督は渡辺一貴、脚本は小林靖子が務めました。NHKで放送されたドラマ版のキャスト・スタッフが再集結し、パリのルーヴル美術館でのロケ撮影も敢行された意欲作です。

物語は、漫画家・岸辺露伴が、かつて出会った女性・奈々瀬から聞いた「この世で最も黒い絵」の謎を解き明かすためにルーヴル美術館へ向かうことから始まります。そこで露伴は、過去の因縁や美術館に隠された陰謀、そして自身の過去と対峙することになります。

あらすじ

漫画家・岸辺露伴は、新作の取材で訪れた骨董店で、モリス・ルグランという画家の「黒い絵」に興味を持ちます。オークションで落札したものの、絵は強奪されてしまいます。手元に戻った絵の裏には、モリス・ルグランの「これはルーヴルで見た黒。後悔」という言葉がフランス語で書かれていました。

露伴は青年時代に出会った女性・奈々瀬を思い出します。奈々瀬は露伴に「この世で最も黒く、邪悪な絵」の存在を教え、ルーヴル美術館にあると示唆していました。露伴は奈々瀬の言葉を確かめるため、ルーヴル美術館へと向かいます。

ルーヴル美術館で、露伴は担当編集の泉京香と共に、問題の絵が閉鎖された倉庫にあることを突き止めます。美術館関係者も知らない事態に、露伴は通訳のエマ・野口やキュレーターの辰巳隆之介、そして消防士たちを伴い、倉庫の見学を許可されます。そこで一行は、フェルメールの絵と思われる贋作を発見します。

露伴は、辰巳らが美術館の所蔵品を贋作にすり替えている犯罪グループであると推理し、彼らと対峙します。しかし、その最中に美術館職員たちは次々と幻覚を見て怪現象に襲われ、命を落としていきます。露伴は、この怪異がそれぞれの「後悔」や血縁者の罪に基づいていることを悟ります。

露伴は、怪異の原因が倉庫の奥にある日本人画家・山村仁左右衛門の絵であることを突き止めます。露伴の前に現れたのは、黒い顔料にまみれた武士の霊でした。追い詰められた露伴の前に、和装の奈々瀬が現れ、武士を押しとどめます。露伴は好機を逃さず自身の能力「ヘブンズ・ドアー」を使って脱出に成功し、呪われた仁左右衛門の絵は焼失します。

帰国後、露伴は奈々瀬と仁左右衛門の墓を発見し、奈々瀬の霊と再会します。露伴はヘブンズ・ドアーで、江戸時代に生きていた夫婦の悲劇を読みます。仁左右衛門は、妻の奈々瀬の黒髪の美を再現しようとするあまり、神聖な木を傷つけ、その結果、奈々瀬は命を落とし、仁左右衛門は復讐に走ります。最後に描いた妻の肖像画が、呪われた「黒い絵」の正体でした。露伴は、奈々瀬との再会を通じて過去を受け入れ、再び漫画家としての日常に戻ります。

登場人物

岸辺露伴: 特殊能力「ヘブンズ・ドアー」を持つ人気漫画家。過去の因縁と「黒い絵」の謎を追う。
泉京香: 岸辺露伴の担当編集者。露伴の取材に同行し、事件に巻き込まれる。今作では父親が幼い頃に亡くなっていたという設定が明かされる。
奈々瀬: 露伴が青年期に出会ったミステリアスな女性。「この世で最も黒い絵」の存在を露伴に教える。
山村仁左右衛門: 江戸時代の御用絵師。妻の黒髪を再現しようと執着するあまり、悲劇を引き起こす。
辰巳隆之介: 東洋美術の専門家で、ルーヴル美術館の収蔵品調査を行っている。
エマ・野口: ルーヴル美術館の職員で、露伴たちを案内する。
モリス・ルグラン: ルーヴル美術館で模写をしていた画家。彼の「黒い絵」が物語の鍵となる。

キャスト

岸辺露伴 / 山村仁左右衛門: 高橋一生
泉京香: 飯豊まりえ
岸辺露伴（青年）: 長尾謙杜
奈々瀬: 木村文乃
辰巳隆之介: 安藤政信
エマ・野口: 美波

スタッフ

原作: 荒木飛呂彦
監督: 渡辺一貴
脚本: 小林靖子
音楽: 菊地成孔 / 新音楽制作工房
人物デザイン監修・衣装デザイン: 柘植伊佐夫

制作

2020年に企画が始動し、2022年9月から2023年3月にかけて撮影が行われました。パリ市街やルーヴル美術館でのロケも敢行され、日本映画としては『万能鑑定士Q モナ・リザの瞳』以来2作目のルーヴル美術館での撮影となりました。制作にあたっては、原作者の荒木飛呂彦からの要望を取り入れ、過去編が追加されるなど、原作からいくつかの要素が加えられています。

原作との違い

原作では「藤倉奈々瀬」という名前でしたが、本作では名字が削除されています。また、露伴が奈々瀬を思い出す展開に違和感が生じないよう、モリス・ルグランや「黒い絵」の設定が追加されています。

評価

興行収入は12.5億円を記録し、NHKが制作したドラマの映画化作品としては初の10億円突破となりました。批評面では、ストーリーの複雑さや説明過多なセリフを指摘する声がある一方、独特な世界観やパリのロケーション、キャストの演技は高く評価されています。

音楽

音楽は、ドラマシリーズに引き続き菊地成孔が担当。今作では、様々な時代が描かれる映像に合わせて、統一感を出さず、オムニバスのような形で制作されています。AIを使用した楽曲や、過去編では浄瑠璃音楽を元にした楽曲が使用されています。

関連商品

映画ノベライズやヴィジュアルブックが発売されています。また、Blu-rayとDVDが2024年7月26日に発売されました。サウンドトラックはドラマシリーズの劇伴とカップリングされ、2023年10月25日に発売されました。

イベント

公開前には試写会や先行上映会が行われました。公開後には舞台挨拶や、監督とゲストによるティーチインイベントが開催されました。また、体験型イベントも開催され、ファンを楽しませました。

コラボレーション

京王電鉄とのタイアップ企画や、フランス料理店「俺のフレンチ」とのコラボメニューが展開されました。

外部リンク

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』公式サイト
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