島津久保

島津久保（しまづ ひさやす）

島津久保は、安土桃山時代に活躍した武将であり、島津義弘の次男として生まれました。父・義弘や伯父・義久から早くから後継者として期待され、その将来を嘱望されていました。

生涯

豊臣秀吉による九州征伐後、久保は日向国諸県郡に所領を与えられましたが、一時的に豊臣氏の人質となる時期もありました。しかし、その武勇と才能は早くから認められ、小田原征伐や文禄の役といった重要な戦にも参加しています。

しかし、文禄2年9月8日（1593年10月2日）、朝鮮の唐島（現在の巨済島）にて、わずか21歳という若さで病死しました。若すぎる死は多くの人に惜しまれ、彼の死を悼み、3名の殉死者が出たほどでした。

死後の弔い

久保の死後、伯父である島津義久は、彼の冥福を祈るために、冒頭に「南無阿弥陀仏」を冠した和歌を詠みました。この和歌には、久保への深い哀悼の念が込められています。

また、堀之内久規と平山忠続という二人の家臣は、久保の菩提を弔うために山伏となり、それぞれ日限坊、一忠坊と改名しました。彼らは六十余州を巡り、一国三部の法華経を納め、久保の霊を慰めました。

愛猫ヤス

朝鮮出兵の際、父・義弘は、正確な時刻を把握するために7匹の猫を連れて行きました。猫の目の瞳孔が明るさによって変化することを利用し、時間を確認するためでした。7匹のうち、無事に生還できたのはわずか2匹でしたが、そのうちの1匹を久保は大変可愛がり、「ヤス」という名前をつけていました。ヤスは白地に黄色の波紋模様を持つ美しい猫でした。

現在、磯庭園の一角にある猫神神社には、この7匹の猫が祀られており、絵馬にはヤスの模様を模した白と黄色の猫が描かれています。

島津義久の弔いの和歌

久保の死を悼み、島津義久が詠んだ和歌には、深い哀悼の念が込められています。各句の冒頭に「南無阿弥陀仏」の文字を冠し、久保の冥福を祈る内容となっています。

「南」 なく蟲の　聲は霜をも　待やらて　あやなく枯るる　草の原かな
「無」 紫の　雲にかくれし　月影は　西にや晴るる　行衛なるらん
「阿」 雨はただ　空にしられぬ　習なれや　憂き折々の　袖にかかりて
「弥」 みし夢の　名残はかなき　ね覚かな　枕にかねの　聲ばかりして
「陀」 尋ねても　入らまし物を　山寺の　ときおく法の　深きこころを
「佛」 筆をみぎに　弓を左に　もてあそぶ　人のこころや　名に残らまし


島津久保は、若くしてこの世を去りましたが、その短い生涯の中で多くの人々に愛され、記憶される存在でした。

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