島津忠直 (垂水家)

島津忠直（しまづ ただなお）は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した薩摩藩士であり、大隅国垂水（現在の鹿児島県垂水市）を領地とする垂水島津家の8代当主です。彼は、藩主島津綱貴の三男として生まれ、幼少の頃に垂水島津家の家督を継ぎました。

忠直は、先代の久治から引き継いだ嫁女川（よめじょがわ）の疎水工事に尽力しました。この工事は、地域の農業用水を確保し、水害を防ぐための重要な事業であり、莫大な費用と長い年月を費やして行われました。忠直は、この難工事を継続し、後継者の貴儔の代になってようやく完成を迎えました。この疎水工事は、地域の発展に大きく貢献し、現在でもその功績が語り継がれています。

島津家における忠直の家格は、加治木島津家に次ぐ2番目の位置にあり、藩内でも重要な役割を担っていました。また、忠直は和歌にも才能を発揮し、父である綱貴の長寿を祝う宴席で詠んだ歌は、その人柄を表すものとして知られています。

忠直の生涯は、24歳という若さで幕を閉じました。しかし、彼が成し遂げた疎水工事は、その後の垂水地域の発展に大きく貢献し、その功績は今もなお讃えられています。家督は、兄である藩主島津吉貴の三男、貴儔が相続しました。貴儔と忠直の次女鎌鶴との間に生まれた娘である都美は、加治木家の島津久門（のちの7代藩主重年）に嫁ぎ、8代藩主重豪を産みました。このように、忠直の血筋は、後の薩摩藩の歴史にも深く関わっています。

忠直は、短い生涯ではありましたが、その治水事業への貢献、そして和歌の才能など、多岐にわたる活躍を見せました。彼は、藩の発展に寄与しただけでなく、一人の人間としての魅力も持ち合わせていた人物であったと言えるでしょう。

参考文献

『垂水市史』第1巻　垂水市史編集委員会、1973年
『西藩野史』

和歌

君が代はいつもかはらぬ松が枝の幾千年をかながく契らん

この歌は、父である綱貴の50歳を祝う宴席で献じられたもので、その長寿を祝う気持ちが込められています。

もう一度検索