加治木島津家

加治木島津家について

加治木島津家（かじきしまづけ）は、島津氏の支流にあたる武家であり、士族、そして華族でした。島津家久の三男である忠朗を初代とし、江戸時代には薩摩藩の一門として大隅国加治木を領地としていました。明治維新後には、その功績が認められ、華族の男爵家として列せられることとなりました。

歴史

加治木島津家の歴史は、1631年（寛永8年）に島津家久の三男である忠朗が、祖父である島津義弘の遺領から大隅国姶良郡加治木1万石を与えられたことに始まります。その後、領地は1万1800石にまで増加しました。1738年（元文3年）には、島津家の一門としての地位を確立しました。4代当主である久門と5代当主である久方は、それぞれ島津宗家に入り、重年、重豪として名を残しています。幕末維新期には、当主であった久宝が戊辰戦争で功績を挙げました。

明治維新後、加治木島津家は当初士族として扱われました。1884年（明治17年）に華族が五爵制になった際、旧万石以上の陪臣が男爵に含まれるという案があり、加治木島津家も男爵候補として名前が挙がっていましたが、最終的には旧万石以上陪臣は叙爵対象外となったため、士族のままとなりました。

しかし、1882年（明治15年）から1883年（明治16年）頃に作成されたと推測される『三条家文書』所収の『旧藩壱万石以上家臣家産・職業・貧富取調書』によると、当時の当主であった島津久宝は、旧禄高1万1800石、所有財産として金禄公債2万700円、貸付金利歳入1340円、合歳入金4410円90銭、職業は無職、生活状況は可と記されていました。

その後、久宝の孫である久賢の時代に、加治木島津家の旧臣らによる叙爵請願運動が起こり、1897年（明治30年）10月27日、久賢は祖父である久宝の功績により男爵に叙せられました。久賢は貴族院の男爵議員にも選出され、その職務を務めました。久賢の養子である久英（南部利克子爵の子）の時代には、加治木島津男爵家の住居は東京市渋谷区原宿にありました。

歴代当主

初代：島津忠朗 - 父：島津家久（島津本宗家）。子：島津久薫（2代）、伊集院久孟（伊集院伊膳家）、頴娃久甫（頴娃氏本家）
2代：島津久薫 - 父：島津忠朗。子：島津久季（3代、養子、島津本宗家綱久の子）
3代：島津久季 - 父：島津久薫（養父）、島津綱久（実父、島津本宗家）。子：島津久連、島津久門（4代、養子、島津本宗家継豊の子、後の島津本宗家重年）、島津久歓（島津主右衛門家祖）、村橋久昌（村橋氏本家祖）
4代：島津久門 - 父：島津久季（養父）、島津継豊（実父、島津本宗家）。子：島津久方（5代、後の島津本宗家重豪）
5代：島津久方 - 父：島津久門。子：島津久徴（6代、養子、知覧島津家久峯の子）、（実子は島津本宗家重豪を参照）
6代：島津久徴 - 父：島津久方（養父）、島津久峯（実父、知覧島津家）。子：島津久照（7代）、北郷久風（北郷助太夫家）、島津久敬（島津主右衛門家）、村橋久峻（村橋氏本家）
7代：島津久照 - 父：島津久徴。子：島津久徳（8代、養子、今和泉島津家忠厚の子）
8代：島津久徳 - 父：島津久照（養父）、島津忠厚（実父、今和泉島津家）。子：島津久長（9代）、島津久富（島津主右衛門家）、畠山義喬（畠山氏）
9代：島津久長 - 父：島津久徳。子：島津久宝（10代）
10代：島津久宝 - 父：島津久長

参考文献

華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年（平成2年）。ISBN 978-4820540342。
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年（平成27年）。ISBN 978-4642014724。
* 森岡浩『日本名門・名家大辞典』東京堂出版、2012年（平成24年）。ISBN 978-4490108217。

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