島病院

島内科医院：爆心地に立つ、三代続く医院の歴史

広島市中区大手町に位置する島内科医院は、その歴史を1933年、島薫医師による外科病院「島病院」の開院に遡ります。アメリカ留学で培った知識と経験を活かし、島医師は当時としては最先端の医療設備を備えた病院を建設しました。レンガ造りの2階建て、50もの病室を擁するその建物は、空襲にも耐えうる堅牢な構造を誇っていました。多くの患者が訪れ、常に満床状態だったといいます。

戦前の島病院：地域医療の中核

島病院は、単なる医療施設ではなく、地域社会に根ざした存在でした。広々とした中庭では近所の子供たちが遊び、エキゾチックな猿まで飼われていたそうです。島医師は患者が低料金で治療を受けられるよう工夫を凝らし、広島における外科医療のリーダーとして高い技術と評判を築きました。その診療内容は外科全般に及び、特に内臓外科に力を入れていたと伝えられています。

原爆投下と病院の壊滅

1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下されました。島病院は爆心地となり、建物は玄関の柱を残して全壊。多くの患者と看護師が犠牲となりました。当時、島医師は出張診療に出ており、奇跡的に難を逃れましたが、帰還した病院は想像を絶する光景でした。焦土と化した病院跡で、島医師は亡くなった者たちの身元確認や、被爆者の救護活動に尽力しました。

再建と地域医療への貢献

戦後の1948年、物資不足の中、島病院は木造モルタル2階建てで再建されました。島医師は被爆体験を家族に語ることは少なく、その記憶は深い傷として心に刻まれたままだったようです。しかし、彼はこの地で地域医療に貢献することを決意し、病院を運営し続けました。その後、息子の一秀氏、そして孫の秀行氏と、3代に渡り医院は受け継がれ、現在に至ります。2017年以降は「島内科医院」として、内科・消化器内科を中心に地域医療を支えています。

爆心地としての島病院

島病院が原爆の爆心地であったことは、1945年以降、いくつかの調査を経て明らかになりました。現在では、島内科医院南側にある大手町中央駐車場付近が爆心地とされています。広島市は病院跡地に説明板を設置し、平和記念資料館には島病院の被爆瓦が収蔵されています。爆心地という暗い歴史を背負いながらも、島内科医院は地域に寄り添い、医療を提供し続けています。これは、三代にわたる医師たちの強い意志と、地域の人々との信頼関係の証と言えるでしょう。現在も、島内科医院は「時代や周りの景色が変わっても、戦前同様、この地で地域医療に奉仕していく」という理念のもと、診療を続けています。

アクセス

広島電鉄本線（2号線）原爆ドーム前電停下車徒歩3分

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