島秀之助

島秀之助：名審判員の波瀾万丈な生涯

島秀之助（1908年～1995年）は、日本のプロ野球史にその名を刻む名審判員である。兵庫県神戸市出身。神戸市立第一神港商業学校では、4年連続で甲子園に出場するなど、早くからその才能を覗わせる。法政大学に進学後も活躍し、東京六大学野球リーグで2度の盗塁王に輝く。卒業後は逓信省の野球チームで選手兼任監督を務めながら、東京六大学野球の審判も担当するなど、多様な経験を積んだ。

1936年、島は職業野球界に足を踏み入れる。名古屋金鯱軍への入団は、元チームメイトである二出川延明の誘いによるものだった。二出川の退団後、選手兼任監督に就任。1937年には秋季リーグで盗塁王のタイトルを獲得するも、肩の怪我により現役を引退する。同年、三塁コーチとして判定に抗議した際、プロ野球史上2人目の退場者となるという逸話も残している。

選手引退後、島は審判員としての道を歩み始める。1938年、二出川からの誘いを受けてプロ野球審判員となり、公式戦デビューを果たす。その審判生活は、戦争による中断を挟みながらも長く続いた。1940年には陸軍に召集されたものの、怪我の影響で動員事務室勤務となり、すぐに召集解除となる。1941年には、判定をめぐる騒動で試合がノーゲームとなるという劇的な出来事も経験している。

最も有名なエピソードとして、1942年の大洋対名古屋戦での28回延長戦がある。島は球審を務め、3時間47分に及ぶ死闘を最後まで裁いた。この試合は、日本プロ野球史上最長の延長戦として語り継がれている。戦後、審判員として活躍を続け、1949年にはセントラル・リーグの審判部長に就任。初代審判部長として、リーグの発展に貢献した。1950年の第1回日本シリーズ、1951年の第1回オールスターゲームでは球審を務めるなど、数々の重要な試合を裁いた。1959年には、天覧試合の球審を務める栄誉にも浴している。

1963年から審判部長を続けながら専任指導員として後進の育成にも力を注ぎ、数々の審判を指導した。1980年に審判部長を退任し、審判員としてのキャリアに終止符を打つ。引退後も規則委員として活躍し、野球界への貢献は続いた。1989年には野球殿堂競技者表彰を受賞し、その功績は高く評価されている。島秀之助は、審判員として2605試合、オールスターゲーム12回、日本シリーズ10回に出場するなど、類まれなキャリアを誇る。その厳格さと誠実さは、後輩の審判員たちに大きな影響を与えた。「動の二出川、静の島」と評されたように、豪快な二出川とは対照的な、寡黙で謹厳な人物として知られていた。1995年、87歳でその生涯を閉じた。

島秀之助が残した2冊の著書、『プロ野球審判の眼』と『白球とともに生きて-ある審判員の野球昭和史』は、彼の審判人生だけでなく、激動の昭和時代のプロ野球の歴史を知る上で貴重な資料となっている。彼の生き様は、後世のプロ野球関係者たちに、今もなお強い影響を与え続けている。

主な経歴
1908年：兵庫県神戸市に生まれる
1936年：名古屋金鯱軍入団
1938年：プロ野球審判員となる
1949年：セントラル・リーグ審判部長に就任
1980年：審判部長を退任、引退
1989年：野球殿堂競技者表彰受賞
* 1995年：死去

もう一度検索