川中温泉

川中温泉の概要

川中温泉は、群馬県吾妻郡東吾妻町に位置する温泉地です。その最大の特徴は、吾妻川の支流である雁ケ沢川の川底から湧き出る、カルシウム硫酸塩泉の源泉をそのまま利用している点です。加水は一切せず、一部加温のみで提供される温泉は、まさに自然の恵みそのものと言えるでしょう。この温泉の名称も、源泉が川の中にあることに由来しています。

この温泉は、和歌山県の龍神温泉、島根県の湯の川温泉と共に「日本三大美人湯」として知られています。1989年には、これら三つの温泉地が姉妹協定を結び、相互の交流を深めてきました。また、1989年以降は「美人の湯サミット」が持ち回りで開催されていましたが、2004年を最後に開催されていません。しかし、2016年には共同でのプロモーションが試みられるなど、その繋がりは今も続いています。

温泉街の様子

川中温泉には、一軒宿の「かど半旅館」が存在します。近くには松ノ湯温泉もあり、これらを合わせて吾妻渓谷温泉郷とも呼ばれています。

川中温泉の歴史

川中温泉の発見時期は正確には分かっていませんが、地元の人々の間では中世から利用されていたと伝えられています。口伝によると、源頼朝の家臣であった重田四郎が、建久4年（1193年）に病を得てこの地で療養したという話も残っています。また、江戸時代初期の真田氏統治時代には「おたすけ湯」と呼ばれ、困窮者や病人に無料で開放されていたという記録も残っています。1701年には湯小屋が建てられ、1716年の記録には、腫れ物、とげ抜き、難病に効果があるとされていました。

江戸時代には、応永寺の了牛和尚が近隣の村々から寄付を集めて湯小屋を建て、入浴客の便宜を図りました。その後、1714年には応永寺の管理下に入り、1860年には浄瑠璃の竹本政太夫が滞在して浄瑠璃を広めるなど、地域の人々に愛される場所として発展してきました。

しかし、源泉が川の中にあるため、度々洪水によって流され、その度に地元の住民が復旧作業を行っていました。このため、地元住民は無料で入浴できる習慣が昔からありました。明治時代には湯治場として賑わっていましたが、1910年から1940年の間に数回の大洪水によって施設が流出し、しばらくの間は湯だけが放流される状態でした。1947年に「かど半旅館」が再建され、現在に至っています。現在の本館は1939年から1940年頃に建てられ、新館は1969年頃に建てられました。

入浴客は、明治時代から大正時代にかけて年間200人程度でしたが、国道145号やJR吾妻線の開通により大幅に増加し、1964年には年間7200人に達しました。

アクセス

車でのアクセスは、関越自動車道渋川伊香保ICから約60分です。
鉄道を利用する場合は、JR吾妻線川原湯[[温泉駅]]からタクシーで約10分です。

参考文献

木暮敬、萩原進『群馬の温泉』（上毛新聞社、1980年）
『群馬県の地名』（平凡社、1987年）
『角川日本地名大辞典』（角川書店、1988年）
地質調査書『日本温泉・鉱泉分布図及び一覧』（1975年）
地質調査書『日本温泉・鉱泉分布図及び一覧』（1992年）
『全国温泉大事典』（旅行読売出版社、1997年）
『ぐんまの源泉一軒宿』（上毛新聞社、2009年）
『新ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社、2014年)
* 「ぐんまの温泉」（群馬県観光局観光物産課、2020年）

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