住宅営団

住宅営団：戦時下の住宅供給と戦後の影響

1941年（昭和16年）、戦時下の急増する住宅需要に対応するため、住宅営団が設立されました。関東大震災後の義捐金で設立された同潤会の事業を引き継ぐ形で発足し、東京・横浜に限られていた同潤会とは異なり、大阪、名古屋、仙台、広島など全国規模で事業を展開しました。

戦時下の住宅建設

設立当初、住宅営団は労務者向けに年間3万戸の住宅建設を目標に掲げ、多くの借家建設が推進されました。しかし、第二次世界大戦の開戦が迫る中、熟練した大工などの確保が困難となるなど、様々な課題に直面しました。

これらの困難を克服するため、住宅営団は画期的な試みを導入しました。住宅の広さを9坪、12坪、15坪の3種類に規格化し、プレハブ工法の原型となる、ベニヤ板を使った枠組み工法を採用しました。これにより、効率的な住宅建設を可能にしました。

住宅の管理体制にも工夫が凝らされました。管理者には傷痍軍人を採用し、専門的な知識習得のため、住宅管理や衛生に関する2か月間の講習を実施しました。さらに、西山卯三氏をリーダーとする研究グループによる住宅問題に関する調査、研究も進められ、「食寝分離」などの提案が行われました。

しかし、深刻な物資不足は如何ともしがたく、住宅建設は思うように進まず、終戦を迎えることとなりました。終戦後には、応急簡易住宅の建設にも取り組みました。

解散と戦後への影響

戦時中は軍需関係の住宅建設が中心でしたが、1946年（昭和21年）、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の命令により、住宅営団は解散を命じられました。

解散後、建設中の住宅や完成住宅の扱いが大きな課題となりました。建設中の住宅は戦災復興院が引き継ぎ、完成住宅は各府県に委譲されました。1947年3月末には工事の打ち切りが指令され、地方公共団体や日本復興建設株式会社などに工事が引き継がれ、入居済みの住宅は居住者への払い下げが進められました。

残余資産の競売により設立された建財株式会社は、一般建設事業や不動産事業のほか、住宅営団の債権回収や不動産整理などを行い、旧営団職員の一部も受け入れました。東京の同潤会アパートの多くは東京都が管理し、入居者への払い下げが進められました。

住宅営団は、1955年に設立された日本住宅公団の先駆けとなった組織と言えるでしょう。同潤会と住宅営団の事業は、日本の戦後住宅政策に多大な影響を与えました。

住宅地の建設

住宅営団は全国各地に多くの住宅地を建設しました。東京都内では、同潤会から引き継いだ千住緑町や新宿区百人町住宅（越冬住宅）を始め、武蔵野市、三鷹市、調布市、小平市、西東京市など、多くの地域で住宅地を造成しました。特に、飛行機製造工場の従業員向け住宅が多く建設されました。

大阪、神奈川県、福岡県、宮城県、埼玉県、兵庫県、三重県、愛知県など、全国各地で住宅地を建設。朝鮮半島においても、朝鮮住宅営団が設立され、京城府など主要都市で住宅建設が進められました。戦後は大韓住宅公社を経て、現在の韓国土地住宅公社へと繋がっています。

主要な住宅地

住宅営団が建設した住宅地は、現在も多くの地域で住宅地として利用されています。以下に、代表的な住宅地を挙げます。（所在地は戦後の名称）

宮城県仙台市：川内追廻
埼玉県蕨市：蕨穂保作住宅、三和町住宅地
千葉県千葉市：新検見川花園住宅地
東京都：千住緑町、三鷹台駅前、武蔵野市八幡町、吉祥寺、武蔵境上水北、など多数
愛知県名古屋市：稲葉地、中根、明徳南部・北部、など多数
大阪府堺市：初芝住宅
福岡県：富野住宅地、など多数

これらの住宅地は、戦時下、そして戦後の復興期における住宅問題解決に貢献した歴史的遺産です。

参考文献

住宅営団復刻資料刊行記念シンポジウム
幻の住宅営団戦時・戦後復興期住宅政策資料 目録・解題集
戦時・戦後復興期住宅政策資料・住宅営団 全6巻
昭和の日本のすまい 西山夘三
『日本近現代都市計画の展開1868-2003』石田頼房
『「建築線」計画から地区計画への展開』石田頼房・池田孝之
『名古屋都市計画史』名古屋市計画局
住宅総合研究財団研究論文集
日本建築学会関東支部住宅問題部会：『東京の住宅地』
* 秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』

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