川勝鉄弥

川勝 鉄弥（かわかつ てつや）は、幕末の嘉永3年10月26日（1850年11月29日）に生を受け、大正4年（1915年）6月11日にその生涯を閉じた、明治期を代表するバプテスト派の牧会者です。

長崎県にあたる肥前大村藩で生を受けた川勝は、大村藩の藩士として1868年の戊辰戦争に従軍しました。この戦いにおいて、特に上野での戦闘で傷を負っています。

戦後、ジェームス・バラのもとで英語を習得する中で、キリスト教の教えに触れる機会を得ました。そして1874年（明治7年）2月、後に日本を代表するキリスト者となる井深梶之助、本多庸一、熊野雄七といった面々とともに洗礼を受けています。

翌年からはネイサン・ブラウンに師事して聖書研究を深め、その過程でバプテスト派が重んじる浸礼（洗礼の一形態）の意義を理解するに至りました。こうして1877年（明治10年）5月には改めて浸礼を受け、バプテスト教会の一員となりました。そして1879年（明治12年）に按手礼を授けられ、ここに日本で初めてのバプテスト派日本人牧師が誕生したのです。

彼は牧師としての働きに加え、初期の聖書翻訳事業にも大きく貢献しました。師であるネイサン・ブラウンが進めていた新約聖書日本語訳事業においては、その完成版である『志無也久世無志与（しんやくぜんしょ）』の出版に協力者として尽力しました。加えて、W.J.ホワイトが主導し、横浜第一浸礼教会から出版された漢字仮名交じり表記の『新約全書』の翻訳・編集作業にも携わっています。

さらに、信仰を表現する手段として、賛美歌の作詞なども手がけ、日本のキリスト教会における文化的な基盤作りにも貢献しました。

1892年（明治25年）、米国南部バプテスト派が日本における伝道活動、特に九州地方での働きを本格化させると、川勝鉄弥はその一翼を担うべく小倉や福岡へと赴任しました。そして1894年（明治27年）に正式に南部バプテスト派へと籍を移し、以降、九州および山口地方における伝道の発展に多大な貢献を果たしました。彼が牧会者として奉仕した教会は、初期の横浜を含め、小倉、下関、佐世保、熊本など多岐にわたります。

日本におけるバプテスト派形成の初期段階から重要な役割を果たし、聖書翻訳や地方伝道に尽力した川勝鉄弥は、1915年（大正4年）6月11日、66年の生涯を閉じたのです。その功績は、日本のキリスト教史において特筆されるべきものです。

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