川喜田半泥子

川喜田 半泥子: 陶芸家・実業家・政治家

川喜田半泥子（かわきた はんでいし、1878年11月6日 - 1963年10月26日）は、日本を代表する陶芸家、実業家、政治家である。彼は「東の魯山人、西の半泥子」と称され、陶芸界において特異な存在感を持つ人物であり、その作風は自由で破格なものとして評価されている。本名は久太夫政令（きゅうだゆうまさのり）、幼少期は「善太郎」と呼ばれていた。

前半生と実業界での活躍

半泥子は大阪市東区で誕生し、四代続く伊勢の豪商・川喜田家の出身である。彼は裕福な家庭に育ったものの、父や祖父が早くに他界し、1歳のときに家の当主となった。幼いころ、母は実家に帰され、半泥子は祖母によって育てられた。彼は三重県尋常中学を経て東京専門学校（後の早稲田大学）に進学し、1901年に結婚を果たした。

1903年に百五銀行の取締役に就任し、1919年からは第6代頭取を務めた。在任中は「安全第一」をモットーにし、地元の中小銀行を買収しながら経営を健全化させ、百五銀行を三重県有数の金融機関へと成長させた。特に1931年の金融恐慌時には、自身の株を担保に資金を調達し、取り付け騒ぎを乗り切るなど、彼自身の企業努力が注目された。

芸術と文化の支援

半泥子は50歳を過ぎた頃から本格的に陶芸に取り組み始め、1933年に自宅に窯を開いてからは、自らの手で抹茶茶碗を製作した。彼の作品は、独自のスタイルと自由な発想に支えられており、多くの作品は生涯にわたりほとんど市場に出されることはなかった。彼は作品を友人や知人に分け与えることで、その情熱を共有した。

文化活動にも熱心で、1930年には「財団法人石水会館」を設立し、津市の中心部に文化施設を建設して支援活動を行った。この文化施設は1945年の戦災によって焼失したが、その後も活動は続けられた。また、千歳山には川喜田家の所蔵品を収めるための千歳文庫が建設され、陶芸家たちとの交流も積極的に行った。

戦後は郊外の広永に移転し、1950年には百五銀行の相談役に就任。しかし、1955年には再び千歳山に住まいを移した。

死後の評価と現在

半泥子の死後、彼の芸術への貢献は高く評価され、1980年には「石水博物館」が設立された。この博物館はその後、2011年に千歳山に新築移転された。彼の作品は今なお人々に親しまれ、陶芸の発展に寄与したその業績は、他のアーティストや文化人に大きな影響を与えている。

専修寺玉保院には、彼の墓があり、祖母、妻と共に眠っている。川喜田家は江戸時代初期から続く商家で、長い歴史を持つ家族である。伊勢の豪商として名を馳せ、代々風流好学の気風を持つ人々が育ったこの家系から、半泥子は生まれた。彼の実業家としての側面や陶芸家としての創造力は、日本文化の豊かさを象徴するものである。

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