川崎市市民ミュージアム

川崎市市民ミュージアム：歴史と変遷、そして未来へ

川崎市市民ミュージアムは、神奈川県川崎市中原区等々力緑地にあった公立の博物館・美術館です。ミュージアムショップや図書閲覧室なども備えた総合的な文化施設として、地域住民に親しまれてきました。

開館から休館までの歩み：

1988年の開館以来、写真、漫画、ポスター、映像など、複製芸術の収集・展示に力を入れてきました。特に写真部門は、日本の公立美術館としては初の設立であり、木村伊兵衛賞受賞作品など貴重なコレクションを有していました。産業都市川崎の特性を活かし、バウハウスやベルント＆ヒラ・ベッヒャー展など、産業と深く関わる作品も多く企画・展示されました。270席を擁する映像ホールでは、映画の定期上映を行い、ミニシアターとしての役割も担っていました。また、前庭には、世界で唯一現存するトーマス転炉が産業遺産として展示されていました。

館長には、行政OBのほか、加藤有次氏（國學院大學名誉教授）のような学識経験者も就任。2005年には手塚治虫文化賞特別賞を受賞するなど、高い評価を得ていました。2006年には、小田急美術館館長を務めた志賀健二郎氏が館長に就任し、大規模な改修工事を実施。新たなエントランスや企画展示室が増設されました。2011年には空調改修工事により文化庁公開承認施設の要件を満たさなくなったため、重要文化財等の取扱いを自粛しました。その後、指定管理者制度の導入や、集客性の高い企画展の実施により、入館者数を大幅に増加させるなど、運営面でも工夫を凝らしていました。

台風被害と休館：

2019年10月の台風19号による大規模な浸水被害を受け、地下収蔵庫にあった多くの美術品が水没しました。この被害により、約22万9千点の収蔵品が被害を受け、修復不可能な資料も多くありました。修復作業や廃棄処分の決定、そして住民監査請求や住民訴訟といった問題も発生しました。市の対応や損害賠償請求をめぐる裁判は、現在も進行中です。

移転と未来：

台風被害と老朽化を踏まえ、川崎市文化芸術振興会議市民ミュージアムあり方検討部会は、現在地以外での施設整備を提言。2021年には取り壊しが決定し、2023年には多摩区生田緑地にある向ヶ丘遊園跡地への移転が決定しました。2029年以降のオープンを目指し、現在、収蔵品の修復や仮設事務所の運営など、移転に向けた準備が進められています。

主な収蔵作品と関係者：

市民ミュージアムは、ロートレック、ミュシャ、ウォーホルといった巨匠の作品から、日本の現代美術、漫画作品まで幅広いコレクションを有していました。また、多くの学芸員や館長が、ミュージアムの発展に貢献しました。

アクセス：

東急バスや川崎市バスを利用してアクセスすることができました。

川崎市市民ミュージアムは、その歴史に幕を閉じましたが、新たな場所で再出発する準備を進めています。過去の貴重なコレクションと経験を活かし、未来の市民ミュージアムがどのような姿で地域に貢献していくのか、期待が高まります。

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