川崎駅非番警察官強盗殺人事件

川崎駅非番警察官強盗殺人事件

川崎駅非番警察官強盗殺人事件は、1948年3月31日に神奈川県川崎市で発生した、現職警察官による強盗殺人事件です。

事件の概要

1948年3月31日、川崎駅のホームにいたKは、制服を着た巡査Jに呼び止められました。JはKを駅長室に連行し、警察手帳を示して所持品検査を実施。現金300円入りの封筒が見つかったことを理由に、スリの疑いをかけ、Kを駅前派出所に連行しました。

Jは派出所の警察官に「スリらしいので場所を借りたい」と告げ、休憩室でKを再び追及。現金9,900円と雑品を証拠品として預かると言い、Kを警察署へ連行しようとしました。駅員や派出所の警察官はJの行動を疑いませんでしたが、実はJは大森警察署勤務の巡査で、当日は非番でした。

生活費に困窮していたJは、不審尋問を装い通行人から金品を奪う計画を立て、札束を持って買い物をしていたKをターゲットに、現金を紛れ込ませてスリの容疑をでっち上げたのです。

用便のために公衆便所に立ち寄った際、Jは預かった金品を持ち逃げしようとしました。Kが気づき「泥棒！」と叫んだため、Jは同僚から盗んだ拳銃でKを射殺しました。

裁判

刑事訴訟

Jの犯行動機は、母親からの医療費・生活費の要求と、同僚の給料を使い込んでいたことでした。同年7月末には大森警察署寮の食堂への忍び込みが発覚し、8月5日に免職となります。8月26日に母親を訪ねた際、警察の捜査を受けていることを知らされ、自殺を考えるようになりました。

Jは家族の将来を悲観し、一家心中を計画。8月29日に母親と甥を連れて大森海岸からボートで沖へ出て、甥を銃殺し遺体を海に沈め、母親も同意を得て銃殺しました。

その後、Jは知人宅などを転々とした後、8月30日に検挙されました。

同年9月10日に起訴、10月4日に追起訴され、強盗殺人、甥の殺人、母親の承諾殺人、拳銃窃盗、銃砲刀剣類所持等取締法違反により、1949年2月12日に東京地方裁判所で死刑判決を受けました。同年3月3日に控訴を取り下げ、死刑が確定しました。

国家賠償訴訟

東京都の自治体警察に所属していたJが制服警官として犯行に及んだことから、被害者遺族は国家賠償法に基づき東京都を相手に賠償を求めました。しかし、都はJが非番中に管轄外で犯行を行ったため、賠償責任は無いと主張し、最高裁判所まで争われました。

1956年11月30日、最高裁は被害者遺族の主張を認め、「職務執行の外形を備える行為によって他人に損害を与えたと形式的に判断できる場合には、国または公共団体による損害賠償の対象となり得る」との判決を下しました（外形説）。

脚注

注釈

出典

外部リンク

* 公務員の職務行為の範囲 - 学習院大学

もう一度検索