川本隆史

川本 隆史（かわもと たかし）

川本隆史は、1951年12月8日生まれの日本の哲学者で、倫理学と社会哲学の領域において重要な業績を残しています。その学位は東京大学から取得した博士（文学）であり、1997年に論文博士として認定されました。彼は東北大学および東京大学の名誉教授であり、また国際基督教大学の特任教授としても知られています。

来歴

川本は広島市で生まれ育ち、広島学院中学校・高等学校を卒業後、1970年に東京大学の教養学部文科一類に入学しました。その後、法学部から文学部に転部し、1975年に東京大学文学部の倫理学科を卒業しました。学位論文のテーマはカントの宗教哲学であり、1980年には東京大学大学院人文科学研究科の博士課程を単位取得退学しました。97年に博士号を取得後、跡見学園女子大学文学部の教授職を経て、2004年からは東京大学大学院教育学研究科の教授を務め、2015年に退任し名誉教授となりました。

人物

川本は日本国内においてロールズの正義論の研究における第一人者とされています。特に大庭健と共にノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センの思想を日本に紹介し、その後の研究に大きな影響を与えました。最近では、ケアに関する概念の再考に力を入れ、医療や看護、教育など多様な分野にまたがる倫理についての探求を行っています。

著書と編著

川本の著作には、『現代倫理学の冒険：社会理論のネットワーキングへ』（1995年）や『ロールズ：正義の原理』（1997年）があります。また、近年の著作として『〈共生〉から考える　倫理学集中講義』（2008年、2022年岩波文庫）が挙げられます。

加えて、彼は多くの編著も手掛けており、『ケアの社会倫理学：医療・看護・介護・教育をつなぐ』（2005年）や、『マイクロ・エシックス：小銭で払う倫理学』（1993年）等、多岐にわたるテーマを扱った著作があります。

翻訳活動

翻訳者としても著名で、マックス・シェーラーの『知識形態と社会 上』（1978年）や、アマルティア・センの『合理的な愚か者：経済学 = 倫理学的探究』（1989年）などの重要な作品を日本語に翻訳しています。また、ジョン・ロールズの『正義論』（2010年）や、キャロル・ギリガンの『もうひとつの声で：心理学の理論とケアの倫理』（2022年）も彼の翻訳によるものです。

川本隆史の研究と業績は、倫理学分野のみならず、広範な社会学的視野を持つ現代哲学の発展に寄与しており、彼の探求はこれからも多くの人々に影響を与え続けることでしょう。

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