川村二郎

川村二郎（かわむら じろう）について

川村二郎は、1928年1月28日に愛知県名古屋市で生まれ、2008年2月7日に世を去った、日本の著名なドイツ文学者、翻訳家、文芸評論家です。彼の父は陸軍軍人であったため、家族は静岡、東京、金沢、朝鮮光州、そして名古屋と、さまざまな場所で生活した後、名古屋に落ち着きました。

彼は旧制愛知県立熱田中学校（現在の愛知県立瑞陵高等学校）を経て、第八高等学校に進学。1945年に敗戦を迎えた後、1950年に東京大学文学部の独文科を卒業しました。卒業後は、愛知学芸大学、名古屋大学等での教職を経て、1957年に文芸同人誌『秩序』に参加し、文芸評論家としての活動を開始しました。

川村は1961年、三田文学に掲載された「『死者の書』について 釈迢空論」で文芸評論家としての初デビューを果たしました。その後、彼はブロッホやムージルといった著名な作家の翻訳にも携わり、広範な文学活動を展開していきます。

1969年には『限界の文学』という著作で亀井勝一郎賞を受賞し、続く『銀河と地獄』では芸術選奨新人賞を受賞するなど、文学界においてその影響力を高めていきました。1975年には東京都立大学の教授に就任し、1983年には『内田百閒論』で読売文学賞、さらに『アレゴリーの織物』で伊藤整文学賞も受賞するなど、数々の賞に輝きました。

1991年には都立大学を定年退官した後、大阪芸術大学の教授となりました。1998年には定年を迎え、2004年まで客員教授として教壇に立った彼は、その分野において豊かな知識と洞察を持つ講師として、多くの学生たちに影響を与えました。さらに、1996年には紫綬褒章、2000年には日本芸術院賞を受賞し、2005年には日本芸術院の会員としてもその活動を続けました。

川村は著作活動においても非常に多彩でした。『内部の季節の豊穣』では内向の世代に言及し、幻想文学を中心に多彩な視点から文学を論じました。また、古井由吉などの後輩作家の支援にも尽力し、説経節や浄瑠璃などの伝統的な語り物文芸についても考察しました。特に彼は泉鏡花の作品を愛し、幸田露伴の『幻談』の再評価にも力を注いだことで知られています。

また、民俗学にも関心を寄せ、定年後は紀行随想を執筆したりと、文学の枠を超えた活動も行いました。川村二郎は800文字に及ぶ豊かな文学的表現を通じて、戦後日本文学に深い影響を与え、後の世代の作家たちにもその足跡を残しました。2008年に心筋梗塞で逝去した際は、80歳でしたが、その業績は今も多くの人々によって語り継がれています。

もう一度検索