川瀬篤美

川瀬篤美氏は、1937年に生まれた日本の造園家であり、ランドスケープコンサルタントとして知られています。株式会社環境設計研究室を設立し、その代表として、長年にわたり日本の造園設計分野の第一線で活躍してきました。

川瀬氏の専門的なキャリアは、1961年に東京農業大学農学部造園学科を卒業したことから始まります。同年、彼は招聘留学生としてアメリカ合衆国へ渡り、ペンシルベニア大学でランドスケープアーキテクチャーを学びました。この留学期間中、彼は著名なランドスケープアーキテクトであり、『デザイン・ウィズ・ネーチャー』の著者として知られるイアン・マクハーグに師事するという貴重な経験を得ています。マクハーグから生態学的視点に基づいた環境計画手法を学び、MLA（Master of Landscape Architecture）の学位を取得しました。この海外での学びは、その後の川瀬氏の造園家としての活動に大きな影響を与えたと考えられます。実際、マクハーグの代表作である『デザイン・ウィズ・ネーチャー』（1994年、集文社）の日本語版では、下河辺淳氏と共に総括監訳者を務めており、その思想を日本に紹介することにも貢献しています。

米国での研鑽を積んだ後、1964年に帰国した川瀬氏は、自らの設計事務所である株式会社環境設計研究室を東京都港区に設立しました。この事務所は、以来、公共空間や民間施設など、多岐にわたるプロジェクトのランドスケープ計画・設計を手がける拠点となります。

環境設計研究室が手がけたプロジェクトは、その優れたデザインと環境への配慮が高く評価され、数々の賞を受賞しています。主な受賞歴は以下の通りです。

1983年には、白川環境整備計画により日本造園学会賞を受賞。
1986年には、三崎公園いわきマリンタワーの関連デザインで日本建築学会東北建築賞佳作を受賞。
1988年には、赤穂市海洋科学館のランドスケープで兵庫県みどりの建築賞を受賞。
1993年には、二本松市城山総合体育館のプロジェクトで第11回福島県建築文化賞を受賞。
1994年には、京都府立植物園新観覧温室の周辺景観デザインで第3回京都市都市景観賞を受賞。
また、1993年には、世田谷区呑川親水公園が、人々が集い憩う水辺づくりのテーマで手づくり郷土賞を受賞しています。

これらの受賞は、都市公園、スポーツ施設、文化施設、植物園、水辺など、多様な空間におけるランドスケープデザインの優れた実績を裏付けています。

実務に加え、教育活動にも熱心でした。武蔵野美術大学造形学部建築学科の講師を歴任し、若い世代の建築家や造園家の育成にも貢献しています。

技術的な側面にも関心を示し、1994年には「法面の保護方法及び法面保護用コンクリートブロック」について特許を出願した記録があります（これは最終的に拒絶されています）。その他の設計実績としては、埼玉県さいたま市にある調公園（つきのみやこうえん）などがあり、ELAデザイン室との協働で手がけられています。

著作活動においても、専門知識の普及に努めました。1977年には『建設・造園技術者のための環境設計計画技法』（オーム社）を、1985年には三浦正敏氏と共著で『ゴルフ場開発事業計画資料集』（綜合ユニコム）を刊行しています。

川瀬篤美氏は、海外での先進的な学びを日本の造園分野に導入し、自身の事務所を通じて数多くの優れたランドスケーププロジェクトを実現させました。教育や著作を通じても、日本の造園設計の発展に大きく貢献した人物です。

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