川端要壽

川端 要壽

川端 要壽（かわばた ようじゅ、1924年6月10日 - 2013年3月14日）は、日本の文芸・相撲評論家、小説家です。文芸と相撲という一見異なる分野で、鋭い洞察力と独自の視点に基づいた評論活動を展開するとともに、小説家としても筆を執り、日本の文化史に足跡を残しました。

生涯

川端要壽氏は1924年に岐阜県で生を受けました。幼少期に家族と共に東京府南葛飾郡小岩町（現在の東京都江戸川区）へと移り住み、地元の小岩町立下小岩尋常小学校（現在の江戸川区立下小岩小学校）に入学しました。この小学校時代には、後に角界の最高位に上り詰める第44代横綱栃錦清隆氏と同級生であったという特筆すべき交流がありました。

小学校卒業後、旧制横浜高等工業学校（現在の横浜国立大学理工学部などの前身）に進み、学びを深めました。卒業後の川端氏は、実に様々な職を転々としました。その職業遍歴の詳細は明らかではありませんが、多岐にわたる経験を通じて、彼の幅広い関心や知識の基盤が培われたと考えられます。1969年からは、東京都板橋区に本社を置く三和化学株式会社に勤務しました。また、多忙な活動の傍ら、競馬をこよなく愛する一面もありました。

2013年3月14日、88歳でその生涯を閉じました。

活動と業績

川端氏の業績は、文芸と相撲という二つの柱によって支えられています。

文芸評論家・小説家として

文芸分野においては、特に同時代を生きた思想家や文学者との交流や研究に基づいた著作を発表しました。代表的なものとしては、評論家吉本隆明氏との関係性を綴った『堕ちよ!さらば 吉本隆明と私』（1981年、後に河出文庫に収録）や『修羅の宴 吉本隆明と私』（1986年）があります。これらの著作からは、現代思想の一端を担った人物との緊密な交流や、内面的な葛藤が伺えます。また、戦中・戦後の文学界の一断面を示す同人雑誌『日暦』に焦点を当てた『昭和文学の胎動 同人雑誌『日暦』初期ノート』（1991年）は、昭和文学史研究における貴重な資料を提供しています。小説家としては、後述する相撲をテーマにした作品も執筆しています。

相撲評論家として

川端氏の活動の中でも特に知られているのが、相撲に関する評論や著作です。彼は単なるスポーツとしての相撲だけでなく、日本の伝統文化、歴史、そしてそこに生きる人々の人間ドラマとして相撲を捉え、深い愛情と鋭い分析眼をもって論じました。

相撲に関する著作は非常に多岐にわたります。相撲史全体を通観する大著『物語日本相撲史』（1993年、筑摩書房）は、古代から現代に至る相撲の変遷を詳細に追い、その文化的な意義を深く考察したものです。また、多くの力士の生涯に光を当てた伝記も多数執筆しました。例えば、『春日野清隆と昭和大相撲』（1990年）は、同級生であった元栃錦の親方時代の活躍を描いたものと考えられます。『土俵の鬼二子山勝治伝』（1992年）や『無頼ケンカ玉剛勇横綱玉錦』（1998年）では、相撲史に名を刻む名力士たちの生き様を鮮やかに描き出しました。さらに、『関脇玉椿』（1995年）、『奇人横綱男女ノ川』（1996年、後に小学館文庫）、『勤王横綱陣幕久五郎』（1996年）といった、個性的な力士や歴史上の人物に焦点を当てた著作もあり、それぞれの力士の個性や時代背景を丁寧に掘り下げています。小説形式で力士の生涯を描いた『鎮魂 小説・春日野清隆』（1992年）もあります。これらの著作群は、相撲という世界を通じて、日本の近代史や社会の変化をも映し出しています。

共編著としては、竹森仁之介氏、森光洋子氏と共に編纂した『全作家短編小説集 第4巻』（2003年）があり、文芸の世界にも関わりを持ち続けました。

川端要壽氏は、文芸と相撲という異なる世界の専門知識と、それを繋ぎ合わせる独自の視点を持つ稀有な存在でした。多岐にわたる職業経験や人間関係から得た知見は、その著作活動にも大きな影響を与えたと考えられます。相撲史研究における貢献はもちろんのこと、文芸分野での活動も含め、日本の文化・言論界において独自の地位を占める人物と言えるでしょう。

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