川谷村 (新潟県中頸城郡)

かつて新潟県中頸城郡に位置していた川谷村（かわだにむら）は、明治時代に現在の形にまとまり、その後隣接する村との合併によりその名を消した村です。

村の歴史をたどると、行政区画としては明治6年（1873年）9月には七大区のうち小七区の一部となり、この時点での戸数は117戸でした。教育の面では、明治8年（1875年）9月に上川谷の地蔵堂内に学校が開設されています。明治16年（1883年）1月1日時点での人口は711人、戸数は123戸を数えました。明治17年（1884年）7月には、村の行政を担う戸長役場が尾神村に置かれています。

町村制の施行に伴い、明治22年（1889年）4月1日には、中頸城郡の川谷村、名木山村、石谷村、そして尾神村の一部が合併し、改めて川谷村として発足しました。しかし、その存在は長く続かず、明治34年（1901年）11月1日には、中頸城郡の水源村の一部および上吉川村の一部と合併し、「源村」が誕生したことにより、川谷村は消滅しました。

村内には上川谷、越道（こえど）、関門、庚塚（かのづか）、桜坂、法西寺、黒姫社跡など、多くの小字が存在し、それぞれが地域の細やかな歴史や地理を示していました。

川谷村の食生活について、特に古い記録としては文禄2年（1592年）の太閤検地に関するものがあります。当時、川谷は美守郷に属し、人口は309人でした。検地帳によれば、米の生産高を示す縄高は55石3斗あまり、納める年貢（本納）は13石3斗あまりでした。これを4斗俵に換算すると、生産量はおよそ138俵に対し、約33俵を上納していた計算になります。残りの約105俵で309人の村人が1年間生活することを考えると、一人当たり1日わずか約136合程度となり、当時の川谷村の農民がいかに厳しい生活を送っていたかがうかがえます。

明治半ば頃の食生活に関する古老の話では、主食は米を七割、粟を三割ほど混ぜて炊き、刻んだ大根を加えた粟飯が一般的だったといいます。漬け物としては、大根をぬか漬けにしてたくあんを作り、葉物野菜は塩漬けにしていました。味噌漬けは当時としては贅沢品だったようです。また、味噌を水で溶いてこしたものを「すまし」と呼び、醤油の代わりとして日常的に使用していたと伝えられています。

村内にはいくつかの重要な寺社がありました。

上川神社：明治11年（1878年）の祠堂合祀令を受け、村内に鎮座していた四つの神社（神明社、上川谷八幡社、諏訪社、春日社）を統合する形で計画されました。明治40年（1907年）に新潟県知事の許可を得て、旧春日社の社地に社殿が造営され、「上川神社」と改称されました。造営中、一部の神体は一時的に他の場所へ遷座され、明治42年（1909年）に正式な遷座式が執り行われています。
熊野三社：字城ヶ沢の山腹に鎮座するこの社の創建時期は明らかではありませんが、天和3年（1683年）の川谷村御検地水帳に境内に「宮建て之れ有り」との記録が見られます。奥ノ院には熊野修験特有の装束をまとった「熊野修験神像」が安置されています。拝殿には、正二位伯爵金子堅太郎による「熊野三者の神縁」と記された書が掲げられています。
地蔵堂：このお堂も天和3年の検地水帳に記録があり、境内には古い木立が見られ、村によって守られていたため、古くから年貢が免除されていたことが記されています。天和検地の前である慶長3年（1598年）の検地以前から御除地であったと考えられ、その創建がかなり古いことを示しています。明治8年（1875年）9月には、この地蔵堂の半分を使って学校の分校が開設されています。
法西寺（ほうさいじ）：浄土真宗大谷派（東本願寺）に属する寺院で、松浦彦兵衛の弟である甚太郎が開基と伝えられています。甚太郎が教如証人の弟子となり「法西」の名を賜ったことに由来し、文禄3年（1593年）に阿弥陀如来像を授かって帰郷し、小庵を建てたのが始まりとされています。第十二代住職は後に群馬県渋川市に正蓮寺を開いています。
* 黒姫社跡：下川谷字平坪にあったと伝えられるこの社は、かつて境内には欅の老木が茂っていたと古老は語っていました。長島氏の氏神として崇敬され、水都波売能売命を祭神とし、長島小平太ヱ門の祖が勧請したとされています。明治36年（1903年）に東京彰星堂の宇建立に際し、境内の大欅が寄進され、その後社自体は熊野三社に合祀されました。そのため、残っていた樹木も伐採され、現在ではその跡形を見ることはできません。

また、村の歴史においては、桜坂峠に設けられていた口留番所の存在も特筆されます。この番所では、昼間は二人、夜間は四人の村人が交替で警護に当たり、保倉村、魚沼郡、および刈羽郡方面との間を行き来する人々を取り締まる役割を担っていました。

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