工具鋼

工具鋼について

工具鋼とは、主に金属や非金属材料を加工するために使用される鋼のことです。特に、切削や塑性加工に必要な工具や治具に使用されます。日本工業規格では、工具鋼を炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼の三種類に分類しています。これらの鋼は、強度や耐衝撃性、耐摩耗性に優れており、手動工具や様々な金属加工に必要な刃物、治具、金型、掘削工具、切削工具などに応用されています。また、かつてはエンジン部品などの摩擦機械や摺動部品にも使用されていました。

様々な工具鋼の種類

工具鋼には、低合金工具鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼などの異なるタイプがあります。低合金工具鋼は、比較的軽い負荷環境での小型工具に適しています。ダイス鋼は、プレスや鍛造に用いる金型に使用され、より過酷な条件に耐えられるよう設計されています。一方、高速度工具鋼（通称ハイス）は、高い耐熱性や耐摩耗性が求められる金型や金属切削工具に多く利用されています。金属切削工具においては、超硬合金とともに広く使用されています。

工具鋼は特に優れた曲げ強度を持っており、これは熱処理によって材料強度を大幅に増加させることができる特性に由来します。工具鋼は様々な合金元素を含むため、その構造は多様性に富んでおり、複雑な金属組織が形成されています。例えば、焼戻しマルテンサイト内に微細な遷移金属炭化物が分布しており、これが材料の特性を高めています。

工具鋼の歴史

日本においては、古来から刃物の製作が行われており、鉄と鋼の概念は古くから存在していました。一方、世界中で工具鋼の概念が形成されるには産業革命が影響を及ぼしました。銑鉄の精度向上が求められる中、マイケル・ファラデーの研究を背景に、ロバート・フォレスター・ムシェットがムシェット鋼を発明（1861年）、その後フレデリック・テイラーなどによって高速度工具鋼の地位が確立されました。これにより、銑鉄製品の加工精度が飛躍的に向上し、機械工学の発展に寄与しました。

日本でもこの流れに対応し、鋼の特性を活かした国産合金化が進められました。戦後は、フォード生産システムの普及により、工具鋼やダイカスト金型に適応した鋼が開発されました。このように工具鋼は日本の産業発展とも密接に関わっています。

代表的な工具鋼の種類

代表的な工具鋼には、以下の種類が含まれます。

• - SK1 - 7：炭素工具鋼で、0.60〜1.50%の炭素を含む鋼。
• - SKT、SKS：合金工具鋼（低合金工具鋼）で、炭素工具鋼にタングステン（W）、クロム（Cr）、バナジウム（V）などを少量加えたもの。
• - SKD：合金工具鋼（冷間ダイス鋼、熱間ダイス鋼）で、3%以上のクロムを添加し、その他の元素も複数含む。
• - SKH：高速度工具鋼であり、W、Cr、VまたはW、モリブデン（Mo）、Vを多く含有します。

ダイス鋼は金型用の素材として広く使用され、高速度工具鋼はその高い性能から多くの工場で採用されています。

まとめ

工具鋼は、その強度や耐久性から金属加工の世界では極めて重要な役割を果たしており、今後の技術革新によりさらに進化していくことでしょう。

もう一度検索