工富保

工富 保（くとみ たもつ）: 日本の漫画編集者

工富保は1949年1月10日に生まれ、2011年2月19日に亡くなるまでの62年間、日本の漫画業界で重要な役割を果たした編集者です。彼は講談社に所属し、多くの人気漫画の編集を手がけました。高校時代には体育部で器械体操をしており、その後、早稲田大学を卒業した後、1973年に講談社に入社しました。

入社当初、工富は『週刊少年マガジン』編集部に配属されました。ここでの初期の仕事では、松本零士による『男おいどん』や永井豪の作品を担当しました。特に1978年には、柳沢きみおに注文を出し、恋愛マンガ『翔んだカップル』が生まれ、これはラブコメブームを引き起こしました。この成功は彼の編集者としての評価を高める要因となりました。

工富はその後、小林まことの才能を見抜き、彼のデビューを支援しました。小林まことは『1・2の三四郎』の連載を担当し、工富の影響力を証明することになりました。このように彼は多くの才能を見出し、ヒット作を次々と生み出していくことになります。特に『シェリフ』（原作：鶴見史郎、画：真樹村正）や『THE STAR』（島崎譲）など、ジャンルを問わず多岐にわたる作品の編集に関与しました。

工富は『週刊少年マガジン』で19年間活躍し、その後は『BE・LOVE』や『BE・LOVEブライダル』の編集長を5年半続けました。1998年2月からは『モーニング』の2代目編集長を引き受け、さらに2001年8月からは『イブニング』の創刊編集長を務めました。そして、2003年2月から2004年12月までは再び『週刊少年マガジン』編集長として活躍しました。

最後には、役員待遇の第三編集局長を務め、2010年1月に定年退職しました。工富の働きかけがあった数々の作品は今も多くのファンに親しまれていますが、彼の死は漫画界に大きな損失をもたらしました。2011年2月9日に亡くなり、通夜には約500名が集まりました。生前に『翔んだカップル』を共に作り上げた柳沢きみおは、彼の訃報を聞いた際、自分の心の中で特別な存在であったことを認識し、ロウソクを灯し合掌し続けました。

工富の人柄は、彼の功績だけでなく、彼を知る漫画家たちの証言からも垣間見ることができます。小林まことは、工富を「ノセ上手で、漫画家からアイデアを引き出すのが得意だ」と評しています。永井豪の『バイオレンスジャック』には「くとみ先生」という名前が使われ、彼の影響力は作品の中にも顕著に表れています。また、小林まことの『I am マッコイ』では、工富の姿がモデルとして登場するなど、彼の存在感は漫画の世界でも重視されていました。

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