工程能力指数

工程能力指数とは

工程能力指数（Process Capability Index）は、製造プロセスがどの程度安定して製品を規格内に収める能力があるかを数値で示す指標です。品質管理の分野で広く用いられ、プロセスの改善や品質の維持に役立てられています。この指数は、特に工程が管理状態にあり、安定した状態で予測可能な場合に有効です。

工程能力と工程性能

工程能力指数と似た概念に、工程性能（Process Performance）や工程性能指数（Process Performance Index）があります。工程能力指数が安定した状態のプロセスを評価するのに対し、工程性能はプロセスが安定していない場合に使用されます。また、工程能力比率（Process Capability Ratio）という言葉は、工程能力指数の逆数として定義されることがあります。

工程能力指数の定義

一般的に、工程能力指数は以下の要素を用いて算出されます。

USL: 上側規格値
LSL: 下側規格値
T: 特性値の目標値
μ: 母平均の推定値
σ: 母標準偏差の推定値

これらの要素を用いて、さまざまな工程能力指数が定義されます。これらの指数は、特性値が正規分布に従うことを前提としていますが、他の確率分布を考慮した定義も存在します。

工程能力指数の評価

工程能力指数は、値が大きいほどプロセスの能力が高いことを示します。評価値が0付近または0以下の場合、製品の特性が目標値から大きくずれているか、ばらつきが大きすぎることを意味します。

一般的に、両側規格に対してCpが1.00の場合、平均値を中心に±3σの範囲が規格幅と一致することを意味しますが、プロセスの変動を考慮すると、少なくともCp>1.33であることが望ましいとされています。例えば、自動車業界では、AIAGが発行する「生産部品承認プロセス（PPAP）」マニュアルで、指数が1.67より大きい場合は承認基準に達し、1.33より小さい場合は基準を満たさないとされています。

ただし、受け入れ可能なCpkの最低値は、業界やプロセスの種類によって異なるため、一概には言えません。そのため、評価基準には議論の余地があり、適切な評価方法がないために評価が省略されることもあります。

仕様と工程能力

工程能力は仕様と密接に関連しているため、工程能力指数の評価と仕様の重要性は同等です。もし、仕様が部品の機能性や危険性を考慮していない場合、その工程能力を評価する意味はありません。一方で、仕様から外れた部品がもたらす危険性が重要である場合は、工程能力を評価する必要があります。

田口の損失関数は、この考え方をよく表しています。

ある専門家は、工程能力指数の下限値として以下の値を推奨しています。

指数値	評価

-	---------
< 1.0	工程能力が不足している
1.0 - 1.33	工程能力は十分ではないが、管理は必要
1.33 - 1.67	工程能力は十分
> 1.67	工程能力は非常に高い

ただし、2.5以上の値は過剰な精度追求であり、生産コストの増加につながるため、避けるべきとされています。

区間推定

算出される工程能力指数の値は点推定値であり、その値を基準値と比較するだけでは不十分です。より正確に評価するには、区間推定を行う必要があります。例えば、Cpについては、以下の方法で両側信頼区間を求めることができます。

信頼水準1-αでの両側信頼区間は以下の式で与えられます。


(Cp √(χ²(1-α/2;φ)/φ), Cp √(χ²(α/2;φ)/φ))


ここで、φ=n-1（nはデータ数）です。この式は、標本分散が自由度φのχ²分布に従うことから導かれます。

また、区間幅2δで推定するのに必要なデータ数については、次の近似式が知られています。


n ≥ ((Cp² u(α)²)/(2*δ²)) + 1


ここで、u(α)は標準正規分布N(0,1)の両側100α点です。

まとめ

工程能力指数は、製造プロセスの品質を評価し、改善するための重要なツールです。適切な評価と活用により、製品の品質向上と安定生産に貢献します。区間推定や必要なデータ数の考慮も重要です。

信頼水準0.95における必要データ数の目安を以下に示します。

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