工藤茂光

工藤茂光：伊豆を制した武将、狩野氏の祖

工藤茂光（くどう もちみつ/しげみつ）は、平安時代末期の伊豆国を代表する武将であり、豪族として名を馳せました。藤原南家の血を引く工藤氏の一族であり、狩野氏の祖としても知られ、狩野茂光（かの もちみつ/しげみつ）とも呼ばれています。

伊豆における勢力拡大

茂光の勢力範囲は、山がちな地形でありながらも、伊豆国を代表する牧草地である牧之郷を領有していたことが特徴です。この牧之郷で産出される良質な馬を多数所有していたことが、伊豆半島において最大の勢力を築く上で大きな要因となりました。

源為朝の追討

伊豆大島を所領としていた茂光は、保元の乱（1156年）で大島に流罪となった源為朝の監視役を任されます。しかし、為朝は流人でありながらも周辺の豪族を従え、自立の動きを見せ始めます。これに対し、嘉応2年（1170年）に茂光は為朝を追討し、自害に追い込みました。

源頼朝の挙兵と石橋山の戦い

治承4年（1180年）、同じく伊豆国で流人生活を送っていた源頼朝が平家打倒の兵を挙げると、茂光は頼朝の下へすぐに馳せ参じました。しかし、石橋山の戦いにおいて、平家方の大庭景親・伊東祐親らとの戦いで敗北し、茂光は自害しました。一説には、茂光は肥満体であったため、思うように走ることができず、周囲の足手まといになることを嫌い、外孫である田代信綱に介錯を懇願したとも伝えられています。

狩野氏の繁栄

茂光を祖とする狩野氏は、鎌倉時代から安土桃山時代の小田原征伐に至るまで、武家として活躍しました。その末裔は現代に至るまで伊豆に多数残り、伊豆の名門として名を連ねています。後北条氏に仕えた狩野泰光・狩野一庵や、著名な画派である狩野派は、茂光の子孫にあたります。

工藤茂光は、伊豆の地において武将、豪族として勢力を拡大し、源平合戦という激動の時代を駆け抜けた人物でした。その血筋は、狩野氏を通して後世にまで影響を与え、伊豆の歴史にその名を深く刻んでいます。

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