左社綱領

左社綱領の概要

左社綱領（さしゃこうりょう）は、1954年に制定された日本社会党左派の公式綱領であり、現在の日本社会党の綱領として親しまれています。この綱領は、日本社会党が1949年に形成された際、分裂を経て再編成する中で、初めて一つの文書としてまとまったものです。

策定の経過

左派社会党は、1951年に組織が分裂したにもかかわらず綱領を持たず、政策の指針が不明確な状況が続いていました。そのため、1953年1月の第10回大会で綱領の策定が承認されました。同年4月には中央執行委員会にて綱領委員会が設立され、委員長に和田博雄、幹事に稲村順三が選ばれました。さらに、20名以上のメンバーが選出され、草案作成に取り掛かりました。

草案が作成される際、稲村順三を中心に議論が進められましたが、清水慎三が提案した対案、いわゆる「清水私案」が提出され、民族闘争を重視する立場を取っていました。しかし、綱領委員会ではその案は否決され、結局、中央委員会によって草案が正式に採択され、1954年1月の第12回大会で確定しました。

綱領の特徴

この綱領は、現在の日本をアメリカの影響下にある資本主義国と位置づけ、労働者階級の闘争こそが民族独立を勝ち取る鍵であるとしています。そのため、社会主義革命を武装蜂起ではなく、国会を通じた平和的手続きによって実現することを主張しています。この考え方は労農派や社会主義協会の流れを受け継いでおり、実践に基づいて社会主義政府を構築するための条件を定めています。

綱領は主に以下の内容に分かれています。

第一部：基本綱領

• - 日本社会党の歴史的使命：社会主義社会の実現を目的とし、資本家からの政治権力の移行を目指す。
• - 日本資本主義の現状：アメリカに従属している一方、独占金融資本が支配する高度な資本主義社会であると説明。
• - 平和革命の展望：社会主義革命が武装ではなく平和的方式で行われることを前提とし、客観的条件が必要であるとする。
• - 社会主義革命の諸条件：社会主義権力は安定した議会多数に依存し、基本的産業の国有化を確立することが大事である。
• - 過渡的段階の政府：条件が整っていない場合、過渡的政権を設立することも一つの手段としています。

第二部：政策綱領

日本社会党の当面の目標は、平和と独立の確立、民主主義の推進、勤労者の生活防衛の強化などです。

第三部：組織綱領

• - 階級性と民主主義の確保：労働者階級を基盤とする広範な大衆政党であり、党員には目的への献身を求めます。
• - 選挙闘争への専念：党は選挙のためだけの組織にならず、党の目的を実現するために全力を注ぐことが求められます。
• - 大衆団体との関係：党員の活動は大衆を巻き込み、信頼を得る努力が不可欠です。
• - 他政党との関係：共同闘争は必要に応じて行うが、綱領に基づく確固たる立場を保つことが強調されています。

影響

1955年10月には両社会党が統一され、左社綱領は廃棄されましたが、その機能は短期間に限られていました。しかし、綱領は労農派や社会主義協会にとって貴重な教訓を提供し、その後の政治活動や思想的議論に大きな影響を与えました。学者たちも綱領の作成に参加し、その理論体系が国政での議論に持ち込まれる契機ともなったことは見逃せません。向坂逸郎はその後も左社綱領を振り返り、その弱点として統一戦線論や国際関係の内容が不十分であることを指摘しました。

関連項目

• - 社会民主主義
• - 日本型社会民主主義

外部リンク

• - 日本社会党綱領-いわゆる左社綱領

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