労農派

労農派について

労農派は、戦前の日本に存在した非日本共産党系のマルクス主義的集団です。彼らの活動は、1927年に創刊された雑誌『労農』に由来しています。この派閥は、日本資本主義に対する独自の見解を持ち、講座派と対立する形で自己主張を展開しました。

形成過程

1922年に創立された日本共産党は、当初多くの著名な運動家を引き付けましたが、1924年には解党を決定しました。この決定に反対した荒畑寒村は、少人数の委員会（ビューロー）を形成し、正当性を主張しました。解党後、山川均と荒畑は、大規模な無産階級政党を構想し、合法的な雑誌などを通じて、広範な支持を獲得しようとしました。ビューローは1925年に共産党再建の方針を決定し、1926年には正式に再建しました。この新組織に対し、山川や荒畑は徐々に異議を唱えた後に分裂し、1927年12月に『労農』を刊行し、労農派が誕生しました。山川は、自らの派閥を「労農派」と名乗ったことに不快感を示しましたが、結果としてこの名称が広まりました。

理論内容

労農派は、当時の日本における資本主義の特殊性を強調しました。彼らは明治維新を不十分なブルジョワ革命とみなし、天皇制をブルジョワ君主制と捉え、現在の政治闘争は帝国主義的な資本主義に対抗するものであるとしました。このため、彼らは社会主義革命が必要だと主張したのです。

ボリシェビズムとコミンテルン

彼らは、ボリシェビズムをロシアの特有の条件に基づく理論とし、日本における社会主義運動の戦略は当時の社会情勢に適応させるべきだとし、他国の理論をそのまま適用することには否定的でした。

政党論

労農派は、一般大衆にとっての根本的課題は、資本主義か社会主義かではなく、全ての社会階層を結集する大衆的な政党を形成することだと考えました。のため、既存の政党や運動に対抗し、新たな政党を結成する必要性があると主張しました。

労働組合論

また、労働組合については、それが政党の代替物であってはならず、日常生活改善と社会主義革命の闘争の両方を重要視すべきであると言及しました。

その後の活動

多くの労農派のメンバーは、1938年の第2次人民戦線事件で逮捕されましたが、戦後には社会主義協会という左派の理論的集団にその流れが引き継がれました。この後、労農派の考え方は日本社会党や総評の設立にも影響を与えました。

主要な人物

労農派には多くの著名な経済学者や社会運動家が参加していました。

• - 経済学者: 櫛田民蔵、大内兵衛、猪俣津南雄、土屋喬雄、向坂逸郎など。
• - 社会運動家・政治家: 堺利彦、山川均、荒畑寒村、鈴木茂三郎など。
• - 文学者: 葉山嘉樹、青野季吉、平林たい子、小牧近江など。

参考文献

• - 社会主義協会『社会主義協会テーゼ』
• - 石河康国『労農派マルクス主義：理論・ひと・歴史』
• - 佐藤優・山崎耕一郎『マルクスと日本人』

このように労農派は日本における左派運動に特異な影響を及ぼし、戦後の社会民主主義の形成にも寄与しました。

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