己爾乃神社

己爾乃神社について

滋賀県守山市の洲本町にある己爾乃神社（こじのじんじゃ）は、地域の歴史と文化が色濃く残る神社です。この神社は、古い文献『延喜式神名帳』に記載されている式内社で、近江国野洲郡に属しています。実際には、同名の神社が近接して存在し、それぞれが独自の由緒を持ちながらも、河川との結びつきを通じて信仰を深めていたと考えられています。特に、野洲川北流部から琵琶湖へと繋がる位置関係は、神社の信仰の起源と関連していると言えるでしょう。両社とも式内社の伝承を持ちながら、これらの神社が一体のものとして存在していた可能性も秘めています。

己爾乃神社（開発）の詳細

洲本町字開発にあるこの神社は、地域の人々によって「開発の己爾乃神社」と呼ばれています。もともと近くには「列系図橋」と名付けられた橋が架かっていたことから、「列系図の己爾乃神社」という呼び名も用いられることがあります。主祭神には伊邪那岐命と伊邪那美命が祀られており、天児屋根命と伊香津臣命が配祀されています。

この神社の由緒は古く、社伝によれば、天長6年（829年）に伊香厚武という人物によって創建されたとされています。伊香厚武は伊香氏の末裔であり、彼自身は中臣氏と縁をつなげていることから、祭神もその伝承に基づいて選ばれたものとされています。また、伊香氏は神道において重要な役割を果たしていた系列に属しており、祭祀の歴史は深いことが伺えます。

特に面白いのは、野洲川の氾濫によって多くの神宝や古記録が失われたため、この神社における歴史的な資料が非常に難解であるという事実です。そのため、『己爾乃神社之縁由書』という文書が存在するものの、それを完全に理解することが困難なのです。

この神社には例祭があり、毎年5月5日に行われています。地域の人々にとって、この日を祝うことは重要なイベントであり、神社の歴史を感じることができる貴重な機会として親しまれています。

己爾乃神社（中の前）について

もう一つの己爾乃神社（中の前）は、洲本町字中の前に位置しており、別名「中の前の己爾乃神社」や「大曲の己爾乃神社」とも呼ばれています。祭神には大己貴命、天津彦根命、素盞嗚命を祀っており、創祀は大宝3年（703年）とされています。こちらの神社も歴史的な背景を持ち、永禄年間に社殿が失われたものの、その後復興されています。

文化財

現在、己爾乃神社には銅製経筒が文化財として所在し、これは室町時代に造られたもので、高さ25.3センチ、口径11.2センチと、しっかりとした造りが特徴です。この経筒は昭和49年（1974年）に守山市の文化財として指定されています。

結論

己爾乃神社は、地域の信仰の中心であり、歴史的な背景をもつ重要な文化財です。特に神社と野洲川との関係は、地元住民の生活と密接に結びついていることが分かります。この神社の存在は、地域の歴史を学ぶ上で欠かせないスポットとなっており、今後もその文化が続いていくことが期待されています。

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