市丸利之助

市丸 利之助の生涯と業績

市丸 利之助（いちまる りのすけ）、1891年9月20日生まれは、佐賀県の久里村出身の日本海軍軍人であり、航空草創期のパイロットとして特に名を馳せました。彼の軍歴の中で、特に硫黄島の戦いでの戦死が注目されており、その最期には多くのドラマがあります。

経歴

市丸は、旧制唐津中学校を卒業後、海軍兵学校および陸軍士官学校の両方に合格し、1910年に海軍兵学校第41期生として入校しました。1913年に卒業した彼はその後、1917年には第3期航空術学生としての訓練を受け、1918年にパイロットの資格を得ました。しかし、1926年には訓練飛行中の事故で大重傷を負い、約3年間の療養生活を強いられました。

復帰後は予科練の設立に関わり、初代部長として若いパイロットの育成に尽力しました。教育者としての市丸の取り組みは高く評価され、彼は「予科練育ての親」と称されるほどでした。1936年には海軍大佐に昇進し、鈴鹿海軍航空隊の指揮を執ることになります。

太平洋戦争の時代

1941年12月の真珠湾攻撃を契機に太平洋戦争が勃発し、市丸は戦闘において重要な役割を果たしました。1942年には少将に昇進し、南方戦線や内地防空などを指導しました。1944年には第二十七航空戦隊の司令官として硫黄島に赴任し、翌年の硫黄島の戦いに至ります。

硫黄島の戦い

1945年3月26日未明、日本軍硫黄島の守備隊は最後の反攻を決行しました。市丸少将はこの時、アメリカ軍の陣地に向けて突撃を敢行し、遺書としてアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトに宛てた手紙『ルーズベルトニ与フル書』を残しました。この手紙は、日米戦争の矛盾を指摘し、彼自身の信念を述べたものです。市丸はその後、戦闘で戦死したとされていますが、彼の遺体は発見されていません。

人物像

市丸は寡黙で謹厳な性格であり、詩や短歌、俳句を趣味とする文化的な人物でもありました。指揮官としての地位にありながら自ら積極的に攻撃機に搭乗することもあり、部下への深い人間愛を持っていたとされています。また、彼の指示はいつも明快で、必要な時には意見を述べる姿勢が周囲に印象を与えていました。

家族と遺産

市丸には3人の娘がいます。戦後、彼の遺品の一つである刀がアメリカの骨董店で発見され、その後家族の元に戻されたというエピソードもあります。彼の詩や手紙は、多くの人々に感動を与え、市丸利之助という人物を記憶に留める要因となっています。

関連書籍

彼に関する詳細な情報は、作品『市丸利之助歌集』や、伝記『米国大統領への手紙』などで確認でき、さらに市丸を題材にした映画やテレビドラマも製作されています。

市丸の業績は日本海軍の歴史の中で重要な位置を占めており、彼の生涯は戦争の悲劇と英雄的行動を象徴するものとして、今も語り継がれています。

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