市場孝之

市場孝之氏は、和歌山県田辺市出身の1970年生まれ。元大相撲力士にして元プロ野球選手という、異色の経歴を持つ人物です。中学時代は野球部で4番打者として活躍する一方、相撲部でも才能を開花させました。

1986年3月、中学卒業と同時に佐渡ヶ嶽部屋に入門。琴市場という四股名で初土俵を踏みます。入門からまもなく頭角を現し、1987年3月場所では6勝1敗と好成績を収め、翌5月場所には序二段42枚目まで昇格しました。しかし、左膝の捻挫によって途中休場を余儀なくされ、同年9月場所を最後に大相撲を廃業します。

大相撲廃業後、市場氏は新たな道を歩み始めます。1988年4月には国際海洋高校に入学し、野球部へ入部。野球への情熱を燃やし続け、1989年12月には千葉ロッテオリオンズ（現・千葉ロッテマリーンズ）の練習生となります。そして1991年、ドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから7位指名を受け、念願のプロ野球選手となりました。しかし、一軍出場を果たすことなく、1993年限りで現役を引退します。

現役引退後も、市場氏の野球界への貢献は続きます。福岡県粕屋町で野球塾を開設し、塾長として指導にあたります。2005年11月には、社会人野球チームの福岡ミサキブラッサムズ（現・福岡オーシャンズ9）のヘッドコーチに就任。その後、2007年3月には福岡県嘉麻市を拠点とする社会人野球チーム「嘉麻市バーニングヒーローズ」を結成し、選手兼監督としてチームを率いました。このチームでは井手らっきょ氏が選手会長を務めていたことでも知られています。

2004年には、故郷和歌山県田辺市で保育所の体育指導の経験も積んでいます。相撲、プロ野球、そして教育現場での経験を活かし、2008年4月からは嘉麻市を中心に小学校や中学校で週1回、ゲストティーチャーとして体育や道徳の指導を行うようになりました。さらに、2009年には東北楽天ゴールデンイーグルスジュニアスクールのコーチに就任。2010年には幼児体育指導者の検定資格を取得し、東北楽天ゴールデンイーグルスジュニアスクールキッズコースのチーフ幼児体育指導者として活躍しました。2011年3月からは、福岡ソフトバンクホークスのリハビリ担当スタッフ、そして同球団の野球塾チーフコーチも兼任するなど、幅広く活躍しています。

市場氏のプロ野球時代の成績は、一軍公式戦出場なしという結果に終わりましたが、その人生は決して平凡なものではありませんでした。大相撲力士、プロ野球選手、指導者、教育者として、それぞれの立場で経験を積み重ね、多様な才能を開花させてきました。彼の波乱万丈な人生は、多くの人々に勇気と感動を与え続けていると言えるでしょう。大相撲での通算成績は10場所出場で26勝21敗16休という記録を残しています。背番号は、1990年に86番、1992年から1993年にかけては94番を使用していました。

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