市川團蔵 (3代目)

三代目市川團蔵：江戸と上方を行き来した歌舞伎役者

三代目市川團蔵は、宝永6年（1719年）に生まれ、明和9年（1772年）に没した江戸時代の歌舞伎役者です。屋号は三河屋、俳名は市紅、紋は丸に三引・三升でした。

團蔵は、森田座の手代の子として誕生し、若くして狂言作者坂東田助の養子となり、坂東次郎三郎を名乗りました。その後、初代市川團蔵の門下に入り、市川次郎三と改名。元文4年（1739年）、初代團蔵の養子となり、市川團三郎を襲名します。しかし、翌年には養父と養兄を相次いで亡くし、元文5年（1740年）11月、中村座『宮柱太平記』の村上彦四郎役で三代目市川團蔵を襲名することになります。

襲名後は、延享元年（1744年）に大坂に上り、中の芝居に出演。寛延元年（1748年）には京都の染松七三郎座にも出演し、その後上方で長く活躍しました。江戸に戻ったのは、実に18年後の宝暦11年（1761年）、森田座での出演です。その後、再び大坂へ行き、明和7年（1765年）に江戸へ戻りましたが、明和9年（1772年）1月、中村座での出演を最後に舞台を離れ、同年6月に亡くなりました。

團蔵は、生涯の大半を上方で過ごした、珍しい経歴を持つ役者でした。その芸風は、二代目市川團十郎に似ていたと評され、武道、実事、荒事を得意とし、敵役もこなす幅広い演技力を持っていました。

彼の没後、四代目市川團蔵を襲名したのは、三代目團蔵の位牌養子（未亡人の養子）である三代目市川團三郎でした。

経歴のまとめ

生誕: 宝永6年（1719年）
没年: 明和9年（1772年）
主な活動場所: 江戸、大坂、京都
襲名: 市川次郎三、市川團三郎、三代目市川團蔵
* 特徴: 二代目市川團十郎に似た芸風、武道・実事・荒事を得意とした演技力

上方での長期活動

三代目市川團蔵は、江戸を拠点とする役者でありながら、長期間にわたり上方で活躍しました。これは、当時の歌舞伎界において、珍しいキャリアパスと言えるでしょう。江戸と上方の演劇文化の違いを理解し、両方の舞台で成功を収めた彼の能力は、高く評価されるべきです。上方での経験が、彼の芸風や演技力にどのような影響を与えたのか、興味深い点です。

芸風と役柄

二代目市川團十郎に似た芸風であったとされる團蔵は、武道、実事、荒事といった激しい場面を得意としていたようです。同時に、敵役も演じていたことから、幅広い役柄をこなせる実力派の役者であったことが伺えます。これらの情報から、彼が観客を魅了する高い演技力を持っていたことは想像に難くありません。

養子縁組と襲名

團蔵の生涯は、養子縁組と襲名劇によって彩られています。複雑な人間関係や、当時の歌舞伎界の慣習を垣間見ることができる重要な要素です。これらの出来事が、彼の役者としてのキャリアや人生にどのような影響を与えたのか、更なる調査が必要となるでしょう。

まとめ

三代目市川團蔵は、江戸と上方の舞台を縦横無尽に駆け巡った、実力派歌舞伎役者でした。その芸風、経歴、そして複雑な人間関係は、江戸時代の歌舞伎史を理解する上で、重要な手がかりとなるでしょう。今後の研究において、彼の演じた作品や、当時の観客からの評価などを詳細に調査することで、より深い理解が得られると期待されます。

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