市村羽左衛門 (9代目)

九代目市村羽左衛門（1724年 - 1785年）は、享保から天明にかけて活躍した歌舞伎役者です。屋号を菊屋、俳名を家橘と称しました。八代目市村羽左衛門の長男として生まれ、弟には三代目坂東彦三郎がいます。

1731年、市村満蔵の名で市村座にて初舞台を踏みました。その後、1745年に市村亀蔵と改名。1761年には伊勢参りの名目で上方へ赴き、大坂の中山文七座で五変化の所作事などを披露し、その名声を確立しました。その後、京都でも同様の所作事を上演し、人気を博して江戸に戻りました。

1762年、父である八代目羽左衛門の死に伴い、市村座の座元を相続し、同時に九代目市村羽左衛門を襲名しました。しかし、度重なる火災や先代からの借金に苦しみ、1784年には市村座が倒産。興行権を桐座に譲渡せざるを得なくなりました。失意の中、翌年、中村座の座元である中村勘三郎の勧めにより中村座に出演し、一世一代として変化舞踊を披露。その中で猿回しの猿に扮し、『娘道成寺』の所作事を演じました。

若い頃は、その風貌から魚のようだと評され、荒事を中心に演じていましたが、後に和事、実事、さらには女形も演じるなど、幅広い役柄をこなしました。父である八代目にも劣らない芸風を誇り、特に所作事においては名人との評価を得ました。子に十代目市村羽左衛門がいます。

九代目市村羽左衛門は、その生涯を通じて歌舞伎の舞台で多岐にわたる役柄を演じ、観客を魅了しました。彼の芸は、歌舞伎の歴史において重要な足跡を残しており、その功績は今もなお語り継がれています。

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