市舶司

市舶司とは

市舶司（しはくし）は、中国の歴史において、中国唐代から明代の間に設置された海上貿易を担う官庁です。この官署は、主に貿易に関する事務を担当し、国内外の商人の出入国管理や貨物検査など、広範な職務を果たしました。市舶司の設立は、具体的には唐代の玄宗皇帝が治めていた開元2年（714年）に始まりました。この時に、海上貿易が栄えていた広州に市舶使が設置され、貿易の運営が行われるようになりました。市舶使や押蕃舶使が長官として任命され、時には地方の刺史や節度使がその役割を兼任することもありました。

唐代から宋代への変遷

北宋に入ると、南海貿易が活発化するに伴い、市舶司の役割はさらに重要性を増しました。広州だけでなく、泉州や明州（後の寧波）などにも新たに市舶司が設置され、貿易の管理がより整備されていきました。職務内容は多岐にわたり、商人の出入国手続き、保護・取り締まり、貨物の検査、税金の徴収、禁制品の取り締まり、官買品の購入、外国の使節の接待などが含まれていました。

元代と明代の変化

元代には市舶提挙司という名称に変更され、明代でも広州、泉州、寧波に市舶提挙司が設けられました。ただし、明代は朝貢制度を採用し、倭寇の襲撃を防ぐために外国との貿易や海外渡航を制限する海禁政策を採用しました。このため、市舶司の役割は徐々に小さくなり、実際の貿易活動の多くは密貿易に頼る状況となりました。

清代の市舶司

清代においても初期には市舶司が存在していましたが、1685年に海関が設置されると、その機能は海関に統合され、市舶司は廃止されることとなります。このように、市舶司は中国史の中で一定の役割を果たしてきましたが、時代の流れとともにその存在意義が変化していきました。貿易の仕組みも複雑化し、国家の方針や国際情勢に大きく影響を受けることになりました。

まとめ

市舶司は、唐代から明代にかけて中国の海上貿易を管轄した重要な官署であり、国際的な商取引の中心的な役割を果たしていました。各時代における政策の変化や経済の動向に伴い、その役割と機能は変わっていきましたが、貿易の管理と保護という点では常に重要な存在であり続けました。

もう一度検索