布川俊樹

布川 俊樹（ぬのかわ としき）氏は、1958年7月29日に東京都で生まれた、日本の多才な音楽家です。ギタリストとして活動するだけでなく、作曲家や編曲家としても知られています。東京工業大学工学部社会工学科を卒業後、音楽の道へと進みました。

プロのミュージシャンとしてのキャリアは、ミッキー・カーチス氏のバンドに参加したことから始まりました。その後、1985年から1987年にかけては、サクソフォニストであるMALTA氏率いるMALTA Hit & Runのメンバーとして活動し、経験を積みました。

1985年、布川氏は自身のリーダープロジェクトとして、フュージョンバンドVALIS（ヴァリス）を結成します。このバンドは、六本木の著名なライブハウスであるピットインを中心に、精力的なライブパフォーマンスを展開し、多くのファンを獲得しました。その活動は実を結び、1991年にはファーストアルバムとなるCD『ヴァリス』を日本クラウンからリリースしました。VALISは約20年にわたり活動を続けましたが、2003年3月から6月にかけて行われた解散ツアーをもって、その歴史に幕を下ろしました。

VALISとして活動していた時期の特筆すべき出来事として、1993年には楽器メーカーのアリアから、布川氏のシグネチャーモデルギターが発売されたことが挙げられます。これは、彼の独自のプレイスタイルと音楽性が広く認知され、評価されていた証と言えるでしょう。

VALIS解散後も、布川氏の音楽活動は衰えることなく、新たな展開を見せます。2004年6月には、ベーシストの納浩一氏、ドラマーの山木秀夫氏という日本のトップミュージシャンと共に、ギタートリオアルバム『ブラッド・トリオ』を発表し、高度な技巧と洗練されたアンサンブルを披露しました。

その後も、多様な形態での作品制作に意欲的に取り組みます。2007年6月には、自身初のオルガントリオを主体としたアルバム『The Road To Jazz Jungle』をリリース。同年9月には、以前関わった「ウルトラマンジャズ」のライブ演奏を収録したアルバム『ウルトラマンジャズライブ』を発表しました。また、2009年には、納浩一氏とのデュオによる作品『デュオラマ2』を制作。さらに、同年10月には、自身のキャリアにおいて初めてジャズのスタンダードナンバーに焦点を当てたアルバム『布川俊樹スタンダードジャズプロジェクト』をリリースするなど、ジャズの古典にも深く向き合っています。ベーシストの福田重男氏とのデュオによるアルバム『Childhood's Dream』も制作しており、様々なミュージシャンとのコラボレーションを通じて自身の音楽性を広げています。

ライブ活動においても、重要なステージに立っています。2011年11月には、国際的なジャズフェスティバルであるモントルー・ジャズ・フェスティバルの日本版イベント、「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン・イン・かわさき2011」に、布川俊樹スペシャルバンドとして出演し、その円熟した演奏で観客を魅了しました。

演奏・作曲活動と並行して、布川氏は音楽教育の分野でも貢献しています。2000年4月からは、洗足学園音楽大学にてジャズ・コースの講師を務めており、後進のジャズギタリストの育成に情熱を注いでいます。長年の経験と深い知識を活かし、多くの若い才能を育てています。

教育活動の一環として、多くの教則本や楽譜集も出版しています。リットーミュージックからは、『ジャズギターの金字塔』シリーズや『CD付 ジャズギターの登竜門』といった入門書や理論書を刊行。2010年には、シンコーミュージック・エンタテイメントから『ジャズの壁を超える100のアイディア』を出版するなど、ジャズギターの学習者にとって貴重な教材を提供しています。

布川俊樹氏は、自身のバンドVALISでの革新的な活動から始まり、ソロ、トリオ、デュオなど多様な編成での演奏活動、そして教育者としての貢献を通じて、日本のジャズ・フュージョンシーンにおいて重要な足跡を残しているミュージシャンです。

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