帛画

帛画（はくが）とは

帛画とは、古代中国において「帛（はく）」と呼ばれる絹布に描かれた絵画のことです。紙が発明される以前には、絹布が絵画や文字を記録する媒体として用いられていました。同じく絹布に文字が書かれたものは「帛書（はくしょ）」と呼ばれ、帛画とは区別されます。しかし、中には絵と文字の両方が描かれているものや、絵なのか文字なのか解釈が分かれるものもあり、帛画と帛書の境界線は必ずしも明確ではありません。

概要

帛画は、主に春秋戦国時代から漢代にかけて制作されました。当時の人々は、細かく織られた絹（絹帛）をキャンバスのように使い、絵を描いていたのです。これらの帛画は、古代の思想や文化を研究する上で非常に重要な資料であり、考古学的価値が非常に高いとされています。

英語では「Silk painting」と訳されることがありますが、英語圏でのSilk paintingは、東洋のシルク画全般を指す場合もあり、必ずしも中国古代の帛画のみを指すわけではありません。また、日本においても絹に描かれた絵画は「絹本（けんぽん）」と呼ばれますが、これらは帛画には含まれません。

著名な帛画

数多くの帛画が発掘されていますが、特に有名なものとして以下のものが挙げられます。

楚墓出土品

人物御竜帛画：男性が竜に乗っている様子を描いたもので、同じく楚墓から出土した『人物竜鳳画』と顔が似ていることから、兄妹を描いたものとする説もあります。馬王堆出土の『T型帛画』と並んで、代表的な帛画として知られています。
人物竜鳳画：女性と竜、鳳凰が描かれたもので、「龍鳳仕女図」とも呼ばれます。墓の主を描いたものと推測されています。

馬王堆出土品

馬王堆漢墓から出土した帛画は、保存状態が良いことで知られています。

T型帛画：馬王堆一号墓から出土したもので、上部にヒキガエルとウサギが描かれているのが特徴です。
導引図：多くの人物像とともに、小さく文字が書き込まれています。図がメインではありますが、文字としても解釈できることから、帛書とされることもあります。
地形図：別名「長沙国南部図」。当時の地形を描いたものです。
天文気象雑占：文字と天気を表す図柄が描かれたもので、帛書として分類されることが多いです。

類似品・近隣品

絹に描かれた絵画として、日本では「絹本」が挙げられます。また、唐代以降もシルク画は制作されており、これらは帛画に分類されることは少ないですが、海外ではまとめて「Silk painting」と訳される場合もあり、注意が必要です。

帛画と帛書の関連性

帛画と帛書は、どちらも絹布に描かれたり書かれたりしたものであり、密接な関係があります。特に、図と文字が混在するものは、どちらに分類するか研究者の間でも意見が分かれる場合があります。しかし、帛画も帛書も、古代中国の文化や思想を理解する上で非常に重要な資料であることに変わりはありません。

まとめ

帛画は、古代中国の歴史や文化を伝える貴重な遺産です。絹布に描かれた繊細な絵画は、当時の人々の生活や信仰、芸術に対する意識を垣間見ることができます。考古学的な発掘調査によって、今後も新たな帛画が発見される可能性があり、その研究は歴史の解明に大きく貢献すると期待されています。

関連項目

帛書 - 帛画と同じく帛(絹布)に書かれたもの。
馬王堆漢墓 - 馬王堆帛書が出土した古墳。馬王堆古墳とも呼ばれる。

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